12月24日、月曜日。
今日はクリスマス・イヴ。
もう何の感慨もない。というか、クリスマスへのワクワク感もなければ、期待感もまったくない。
一年365日の、358日目の朝。
でも今日は朝から晴れている。
久しぶりに天気がいい。
真冬の気弱な太陽が、それでも必死になって淡い光を投げかけている。
それだけで嬉しくなる。
今日は所用がある。
家から東部方面に5キロほど行った場所に、ちょっとした用事があるのである。
気ままに歩いて行ってみようか・・・ふとそんな事を考えてみた。
雪は溶けずに積もっているけれど、お日様が出ているクリスマス・イヴというのも珍しい。
いつもならクリスマス寒波がこの街を襲い、猛烈な地吹雪や積雪で難儀するというのに、今日は一体どうしてしまったんだろう?
あくまで穏やかで、薄青色した冬空に幾つかの白い雲が浮かんでいて、真っ白な雪の表面に、冬の太陽の光がゆっくり染み込んでいる。
買ったばかりのブーツを履き、毛糸の手袋をはめ、鼠色のジーンズと厚手の黒のコートを羽織って、明るい外へと出た。
ここから東へ4キロ。
さあて・・・何処を通って行こうかな。
路面はそれでもツルツルに滑っていて、これくらいの太陽じゃ溶けるもんかと冬独特の意地を張っている。
滑らないように、そーっと地面を噛み締めるように歩く。
青森中央大橋の下を潜って、雪景色に彩られた「平和公園」へと入った。
ナンテンだろうか、それとはハナミズキだろうか。
真っ赤な実をつけた低木が、淡い青空を背景に鮮やかな色を浮き上がらせている。
とても綺麗で、暫しその場に佇んでじーっとその美しさに見惚れていた。
数ヶ月前、枯れた落ち葉が絨毯のように敷き詰められていたこの平和公園の周りを、汗を掻きながら何周も走った事がつい昨日のように想い出す。
公園内のジョギングコースは、今はもう一面真っ白な雪で埋まっている。
ジョギングしている人も、散歩している人もいない。
ただ、しーんと静まりかえっていて、遠く街のざわめきだけが微かに聞こえて来る。
平和公園を抜けて、少し歩くと堤川が見えて来た。
まるでCGで描かれたみたいに一片の揺らぎもない水面の向こうに、堂々と聳(そび)え立つ八甲田連峰が鮮やかに広がる。
これもまた、絶景だ。
堤川の歩道橋を渡り、ずっと昔は線路だった遊歩道、「文芸の小道」を歩く。
もう数十分歩いたからか、薄っすらと汗ばんできたようだ。
でも、何も考えず、気ままに街を歩くのってほんと気持ちがいい。
車から見る風景とはまた違うものが目に留まる。それが新鮮なのだ。
小さな喫茶店がある。古い建具屋さんとか、古道具を売っているお店、それから路地を歩いてゆくと、昔から営業しているのだろう、地域の雑貨屋さんもあったりして、それを見ながら歩くだけでも愉しくなる。
ようやく、1時間ほど掛かって目的の場所へと到着した。
そこで短い用事を済ませ、今度は国道4号線沿いをゆっくりと歩く。
心なしか、今日は車の数が少ないように感じられる。
少し小雪が舞って来て、そこにまだ遠くで輝いている太陽の光が時々差し込むから、きらきらと舞い散る白い雪が光って、とても美しい冬景色を造り出す。
帰りは遠回りして中心市街地へと入った。
「サクラノ百貨店」の東側にある、美味しい珈琲を淹れてくれる「COLARS」のカウンターに腰掛け、近くのコンビニで買った新聞を開きながら、ちっちゃな旅の終わりの休息を取る。
みんなみんな、幸せになれたらいいのに・・・。
戦争も争いも政争も無くなり、苦しんでいる人も悩んでいる人も、みんなみんなその蟻地獄から抜け出し、世界だけが穏やかに周っていけたらいいのに・・・。
そんな究極の世界って、いつか本当にやって来るのだろうか?
苦悩も、倦怠も、怠惰も、絶望も、貧困も、一切合財が無くなる日なんて本当にこの世界に訪れる日が来るのだろうか?
それでも、クリスマス・イヴのこの街の空は、あくまでも無垢なままで純粋に透き通っていて、真冬の午後の陽光はこの珈琲ショップの中にも満遍なく降り注いでいる。
すべては終わり、あらゆるものが跡形もなく去ってゆく。
真冬に、散歩してるんじゃない。
僕は、真冬を散歩してるんだ。
今日はクリスマス・イヴ。
もう何の感慨もない。というか、クリスマスへのワクワク感もなければ、期待感もまったくない。
一年365日の、358日目の朝。
でも今日は朝から晴れている。
久しぶりに天気がいい。
真冬の気弱な太陽が、それでも必死になって淡い光を投げかけている。
それだけで嬉しくなる。
今日は所用がある。
家から東部方面に5キロほど行った場所に、ちょっとした用事があるのである。
気ままに歩いて行ってみようか・・・ふとそんな事を考えてみた。
雪は溶けずに積もっているけれど、お日様が出ているクリスマス・イヴというのも珍しい。
いつもならクリスマス寒波がこの街を襲い、猛烈な地吹雪や積雪で難儀するというのに、今日は一体どうしてしまったんだろう?
あくまで穏やかで、薄青色した冬空に幾つかの白い雲が浮かんでいて、真っ白な雪の表面に、冬の太陽の光がゆっくり染み込んでいる。
買ったばかりのブーツを履き、毛糸の手袋をはめ、鼠色のジーンズと厚手の黒のコートを羽織って、明るい外へと出た。
ここから東へ4キロ。
さあて・・・何処を通って行こうかな。
路面はそれでもツルツルに滑っていて、これくらいの太陽じゃ溶けるもんかと冬独特の意地を張っている。
滑らないように、そーっと地面を噛み締めるように歩く。
青森中央大橋の下を潜って、雪景色に彩られた「平和公園」へと入った。
ナンテンだろうか、それとはハナミズキだろうか。
真っ赤な実をつけた低木が、淡い青空を背景に鮮やかな色を浮き上がらせている。
とても綺麗で、暫しその場に佇んでじーっとその美しさに見惚れていた。
数ヶ月前、枯れた落ち葉が絨毯のように敷き詰められていたこの平和公園の周りを、汗を掻きながら何周も走った事がつい昨日のように想い出す。
公園内のジョギングコースは、今はもう一面真っ白な雪で埋まっている。
ジョギングしている人も、散歩している人もいない。
ただ、しーんと静まりかえっていて、遠く街のざわめきだけが微かに聞こえて来る。
平和公園を抜けて、少し歩くと堤川が見えて来た。
まるでCGで描かれたみたいに一片の揺らぎもない水面の向こうに、堂々と聳(そび)え立つ八甲田連峰が鮮やかに広がる。
これもまた、絶景だ。
堤川の歩道橋を渡り、ずっと昔は線路だった遊歩道、「文芸の小道」を歩く。
もう数十分歩いたからか、薄っすらと汗ばんできたようだ。
でも、何も考えず、気ままに街を歩くのってほんと気持ちがいい。
車から見る風景とはまた違うものが目に留まる。それが新鮮なのだ。
小さな喫茶店がある。古い建具屋さんとか、古道具を売っているお店、それから路地を歩いてゆくと、昔から営業しているのだろう、地域の雑貨屋さんもあったりして、それを見ながら歩くだけでも愉しくなる。
ようやく、1時間ほど掛かって目的の場所へと到着した。
そこで短い用事を済ませ、今度は国道4号線沿いをゆっくりと歩く。
心なしか、今日は車の数が少ないように感じられる。
少し小雪が舞って来て、そこにまだ遠くで輝いている太陽の光が時々差し込むから、きらきらと舞い散る白い雪が光って、とても美しい冬景色を造り出す。
帰りは遠回りして中心市街地へと入った。
「サクラノ百貨店」の東側にある、美味しい珈琲を淹れてくれる「COLARS」のカウンターに腰掛け、近くのコンビニで買った新聞を開きながら、ちっちゃな旅の終わりの休息を取る。
みんなみんな、幸せになれたらいいのに・・・。
戦争も争いも政争も無くなり、苦しんでいる人も悩んでいる人も、みんなみんなその蟻地獄から抜け出し、世界だけが穏やかに周っていけたらいいのに・・・。
そんな究極の世界って、いつか本当にやって来るのだろうか?
苦悩も、倦怠も、怠惰も、絶望も、貧困も、一切合財が無くなる日なんて本当にこの世界に訪れる日が来るのだろうか?
それでも、クリスマス・イヴのこの街の空は、あくまでも無垢なままで純粋に透き通っていて、真冬の午後の陽光はこの珈琲ショップの中にも満遍なく降り注いでいる。
すべては終わり、あらゆるものが跡形もなく去ってゆく。
真冬に、散歩してるんじゃない。
僕は、真冬を散歩してるんだ。