2005年1月30日(日曜日)吹雪。
アパートの二階の部屋の窓から、北へ広がる薄墨色の海が見える。
時計の針がちょうど昼の12時を指した。僕は空っぽの冷蔵庫を開け、食べ残したサンドイッチとサラダを仕舞い込む。
海からの、雪を伴った強い風が窓硝子をカタカタと鳴らし、ストーブの上の沸騰した薬缶からあがる湯気を、少しだけ揺らしている。
それまで勤めていた仕事を辞めたことで手に入れた、僅かばかりの退職金ももうすぐ底をつく。八畳一間の部屋に敷いた万年床に潜り込んで、僕はまた静かに眼を瞑る。
もう若くはない。
希望はないけれど、絶望もない。一度も結婚をすることなくたった独りで老いてゆくことへの寂しさや空しさも、今の僕にはない。
僕はゆっくりと眠りの中へと落ちてゆく・・・。
いつか、南の暖かい島へ行ってみたい。輝く太陽と紺碧の海。真っ白な砂浜。爽やかな風。そして、僕の隣には、昔、心から愛したあの女性が笑いながら座っている。全てが美しい。
僕たちは、また始めから全てをやり直すのだ。遅くはない。
その想像は、僕を少しだけ幸福にする。 淳一
アパートの二階の部屋の窓から、北へ広がる薄墨色の海が見える。
時計の針がちょうど昼の12時を指した。僕は空っぽの冷蔵庫を開け、食べ残したサンドイッチとサラダを仕舞い込む。
海からの、雪を伴った強い風が窓硝子をカタカタと鳴らし、ストーブの上の沸騰した薬缶からあがる湯気を、少しだけ揺らしている。
それまで勤めていた仕事を辞めたことで手に入れた、僅かばかりの退職金ももうすぐ底をつく。八畳一間の部屋に敷いた万年床に潜り込んで、僕はまた静かに眼を瞑る。
もう若くはない。
希望はないけれど、絶望もない。一度も結婚をすることなくたった独りで老いてゆくことへの寂しさや空しさも、今の僕にはない。
僕はゆっくりと眠りの中へと落ちてゆく・・・。
いつか、南の暖かい島へ行ってみたい。輝く太陽と紺碧の海。真っ白な砂浜。爽やかな風。そして、僕の隣には、昔、心から愛したあの女性が笑いながら座っている。全てが美しい。
僕たちは、また始めから全てをやり直すのだ。遅くはない。
その想像は、僕を少しだけ幸福にする。 淳一