うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

映画 日本のいちばん長い日

2015年08月12日 | 映画

いま、タイトルを書こうと思って「日本のいちばん暑い日」とかいてしまいました・・

さて、昨日書きそびれた半藤氏の本、そして今日は映画も見てきました。

宮城事件(昭和20年8月14日深更に起きた、一部の陸軍士官たちによるクーデター未遂事件)を題材にしたものです。

先日話がそれたのは、半藤氏がこれを書いたのが50年前の昭和40年のことであり、当時の日本はまだ戦後20年で戦争の生々しい記憶が人々の間に残っており、関係者たちも多数存命だった、ということを書いたあたりでした。つまり、関係者たちに配慮した書き方をせざるを得なかったのだろうな、と。

歴史のパースペクティブというのは、多くの人が体験するところかも知れませんが、自分の年齢と共に変わっていくものです。子供の頃は、祖母たちの若い頃など、遙か昔のことであり、それこそ明治、大正の頃とそれほど区別がつかないような感覚でしたが、年と共に、あのアジア・太平洋戦争の時代がより身近に、自分の生きている現在の延長線上に捕らえられるようになってきている気がします。

人の世は短くても、街や自然はそのまま何世代も残り、かつてそこにいたであろう人々の記憶を思い起こさせてくれます。まあ、日本では街の寿命も短くなってはいますが。

そうはいっても、その時代の空気や、もっと具体的には、人々がどんな形で集い、話し合い、行動していたのか、本を読みながらそんなことを想像します。冷房の(ほとんど)ない時代、正装して御前会議をして、暑くなかったのかな、とかね。

映画を見ると、そんな想像が目の前に出てくるところがいいですね。特に今の映画はCGがすごいので、一気に引き込まれてしまいます。

この日、出先から都心に戻る途中で時間を作り、佐倉にある国立歴史博物館を訪れました。

京成佐倉の駅から徒歩15分、バスで5分なのですが、城跡にあるそうなので坂道がしんどかろうとバスに乗ったところ、あろうことかバスが反対方向に走っていきます。慌てて運転手さんに聞くと、方向が逆との由。親切にも運賃を免除してくれて、歩くときの行き先を教えてくれました。

ちょうど駅に向かう大きな通りのあたりでおりることができたのですが、炎天下1キロちょっと余計に歩くはめに

駅から、今度はあきらめて歩きました。やはり坂はきつい・・。

ついたのは入場終了直前で、大急ぎで回りました。かなりボリュームがありますね。丁寧に見るなら2時間ぐらい必要かも。

佐倉には歩兵連隊があったそうで、その展示も充実していました。

戦意高揚を訴えるポスター

日本の無条件降伏を伝えるカリフォルニアの新聞。'Emperor to Give Homeland First Account Tonight' 、天皇が自国民に対し始めてお言葉をのべられたという 記事があり、その抜粋が記載されています。新聞の見出しとはいえ、to give homeland first accout というきわめて簡単な単語の羅列からこうした意味を伝えるんだから、英語って・・一生勉強してもマスターできそうにないな。

映画は昭和20年4月、鈴木貫太郎枢密院議長が首相に任命されるところから始まる。任命を巡る鈴木と昭和天皇とのやりとり、有名なルーズベルト大統領死去に対する弔辞などをへて、8月10日の最高戦争指導会議まではとんとんと話が進んでいく。

この辺り、人物の紹介などがあまりないので、この頃の史実に詳しくない人はちょっとついていくのが辛いんじゃないかな、という気がする。以後、陸軍青年将校たちなどもたくさん出てくるが、なにしろ同じ制服、坊主頭なものだから、誰が誰だか僕にもよくわからなかった。

大西瀧治郎軍令部次長、安井藤治国務大臣は、原書(日本のいちばん長い日)には出てこなかった(映画は他にも2つの原書を元にしており、そこにでているのでしょうね(訂正:安井大臣は記載がありました。大西中将も触れられているのですが、映画のような会話があったかどうか、確認中))ので、映画を見たときは誰だかわからなかった。もっとも、史実をもとにした映画作品というのはそういうもので、この映画に限ったことではない。それに誰だかわからなくても作品は楽しめる。

ここから青年将校たちの叛乱が始まる。以後は映画を見ていただきたい。

昭和天皇は本木雅弘が演じている。この人は徳川慶喜を演じたとき(大河ドラマ)が印象深い。本人にとっても演技は難しかったかも知れないですね。玉音放送は、本物の録音ではなく、本木氏自らが語っている。阿南惟幾陸軍大臣は役所広司。苦悩する軍人をよく演じている。

歴史上の人物、信長や秀吉などは、いろいろな役者がそれなりの個性で演じている。写真のない遠い時代、それほど違和感を感じることはない(でもないか・・。とくにさいきんの大河ドラマとかはねえ・・)。しかし、昭和の時代、フィルム映像が残っている時代の人物となると、その役者の個性が出てしまうと非常にイメージするのが難しくなってくる。ただ、それにしては山崎努の鈴木貫太郎はよかった。似てる、似てないを通り越して、演技の旨い人というのは人を納得させてしまうものだな、と感心した。

米内光政海相は、映画では見ればわかるのだが(海軍の制服を着ているのだから)、う~ん、あの人は誰がやっても難しそうだな。海相はこの映画ではあまり好意的に書かれていません。大西中将も、イメージがわかないですね。映画ではずいぶんと若く見えるんですよね。

東郷外相は、眼鏡が特徴だからすぐわかる。ただ、この映画では影が薄く、ほとんど台詞もありません。これは作品の視点がそうなのでしょうね。もうすこししゃべらせても良かった気もしますが。下村国務大臣は、僕はアニメンタリー「決断」の描かれ方が好きです。この方ももう少し花を持たせても良かった気がします。

横浜守備隊の佐々木大尉は松山ケンイチです。なんか、らしいというか。ただし、ほとんど出てきません。

 

映画の話はおわりにして、終戦時のこうした動きそのものについての感想ですが、僕には青年将校たちの心情や行動、それをめぐる年長者たちの対応、このあたり、正直言ってわかりかねる部分があります。もっとも、若手将校がクーデターを起こす、は古今東西しばしば見られることではありますが。

彼らの心の底には、80年ほど前の幕末の志士たちの活躍があったのかな、ともおもいますが・。もう少し時間をかけて考えてみたいところです。

同じように敗戦直前の様子を描いた映画として、「ヒトラー 最後の12日間」があります。ここでのドイツ軍将校や政権側の人たちの動きとの対照も興味深いですね。

こんな時に良く思うのは、遠くから鳥瞰して愚かしい行為だと思えたとしても、それをどんどん微細に分析していくと、当事者たちの苦悩や決断の過程が見えてきて、言葉を失ってしまう、ということです。それを、みんな必死だったのだから、と言いたくなる気持ちもわかりますね。しかし、歴史の評価というのはそれで終わってはいけないのだとも思います。

有楽町マリオンで見たので、帰りにちょっと寄り道して、東部第2軍が置かれていた第一生命ビルの前を通った。

畑中少佐らが自決した、二重橋と坂下門のあたりは先日歩いてみた・・。夜歩くのはちょっと怖そう。

 

コメント (2)
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