うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

片岡義男クラシックス

2014年10月30日 | 本と雑誌

久しぶりに本の話。そういえば、先日岡崎久彦大使がなくなられた、と聞いたのが、ちょうど「戦略的思考とは何か」を読んでいたときだったので驚いた。ので、そのことを書くとタイムリーなのだが、まだまとめられない。

こちらは戦略-とは全く違う、ゆるい世界の物語・・。

80年代のはじめごろには、本屋に行くと片岡義男氏の文庫本がずらりと並んでいた。背表紙の色から赤本などと言われていたが、当時の片岡氏は、いくつもの作品が映画化されたりと、大変な流行作家だった。

通俗的だと、嫌う人もいたかもしれない。僕はふだん、こういう流行の仕方をすると敬遠することが多いのだが、片岡氏の作品は好きで、良く読んでいた。最初に手にしたのが高校生の時だったというのもある。自分たちのいる世界からちょっと外に出ると、こういう世界があるのか、というあこがれの気持ち。

最初に読んだのがたしか「ラジオが泣いた夜」。このドライな感覚に背中を掴まれた。以後、毎月のように刊行される文庫本を、出るたびに買っていった。ドライなときは徹底的にドライで、一方ウェットでゆるい表現の作品はこちらも徹底的にぬらっとしている。写真で言えば、針で突いたようなシャープな写真か、ソフトフォーカスでぽわぽわになった作品のどちらか。舞台が日本の、特定の地域で、考証もそれなりにリアリティのある設定なのだが、どこかその視点が日本離れしているというか、外の世界から日本を見ているような、不思議な感覚の描写。子供心にも、その感覚の不思議さはわかったし、刺激的でもあった。

話が長くなったが、その頃読んだ片岡氏初期の作品や、レアな作品を冊子にして限定販売する、という企画が、「片岡義男クラシックス」らしい。先日書店に行ったときは、目立つところに数冊、置かれていた。しばらく前に行ったときも見かけたのだが、70ページくらいの冊子に800円という値段がついているものだから、そのときは手を出さなかった。今回はちょっと迷ったが、とりあえず1冊、買ってみた。

「給料日」、30年以上前に読んだときのことを良く覚えいている。このインモラルな?爽快感というか、ゆるさは、たとえ子供でも理解できていたみたいだ。これ、他の人が書いたら、もっとすさんだ感じというか、荒れた心のひだみたいなものが前面に出てくる可能性もあるだろうし、片岡氏でも、ドライな表現で仕上げて行くやり方もあったかと思う。もしかしたら、片岡氏が読んだハメットの作品は、そういう仕上がり方だったのかもしれない(冊子参照)。それを、6月の湿った空気と夜の闇で包んで、ゆるくぬらっとした感じに仕上げたところが、いかにも片岡義男、という感じがする。

手元にもう何冊かあると思うが、赤本時代の片岡作品。

できれば普通の文庫の形で、復刊してくれれば良いのにな、と思う。

 

コメント
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