週末の街は既にすっかりクリスマス気分だ。
夜は冷えるようになったとは言え、まだ11月だ。イチョウもまだ色づいたばかり。トナカイもちょっと寂しそう。
お正月の飾りはせいぜい1週間ぐらいで片付けてしまうのに。これはあと1ヶ月は飾られ続ける。
大幅な貿易赤字が発表され、先行きも決して明るいとは言えない日本だが、週末の街の賑わいは、そんなことを感じさせない明るさだ。
オフィスを出たのは7時頃。CDを1枚だけ買った。シューベルトのピアノソナタ(19,21番)、リヒテルの演奏。ちょっとこの街には似合ってないかな。
本屋で、藤沢周平の本と、オーディオのムック本を買った。
自分の街に戻り、いつもの店で買ってきた本を眺めながら食事。そんな週末。
世界の10大オーケストラ読了後、今度はこれを読んだ。この秋は中川氏の著作を連続して読んでいるが、氏の守備範囲は広く、中森明菜から坂東玉三郎、三島由紀夫にまで及んでいる。以前は田中長徳氏の「カメラジャーナル」も編集しておられた。
前回、10大オーケストラの時は、カラヤンの客演を軸にオケの選択をしたそうだが、今回はあまりはっきりした基準がない(一応書いてあるが)。あとがきでご自身が突っ込まれているが、無理やり十人にしたという感が強く、ピアニストによって(記録がない為に)記述にムラがある。
個々のピアニスト同士の交流を描く為に、ひとりひとり別に章立てするのではなく、編年体で書かれている。最初に生まれたラフマニノフから、個々のピアニストの生まれ育ちが書かれている。どこで生まれて、父と母、兄弟がどういう人だったか、家の経済状態、いつピアノを習ったか、どんな教師についたか、が、すこしずつ描かれていく。しばらくするとまた別のピアニストがどこかで生まれて、上記のような描写が繰り返される。また場面が変わると、最初のピアニストがコンサート・デビューしたりしている・・。
だんだんと登場人物が増えてきて、とても覚えきれなくなる。この人のピアノ教師がどんな人だったかなど、前に戻って見直さないと思い出せない。この編集方法はちょっとしんどかった。
面白いのは、多くのピアニストには姉(たち)がいて、ピアノを習っている。弟はそれを真似して、姉たちよりも上手に弾いて、母親たち(または姉自身)に見いだされ、教師をつけてもらう、というパターンが多いことだ。コルトーにも姉がいた。中川氏は、
「彼にピアノを教えたのは二人の姉だった。またしても、姉である。まるで大音楽家になるためには、姉の存在が必須条件であるかのようだ。」と書かれていて、思わず笑ってしまった。
編集者の影響なのかどうかはわからないが、中川氏の著作の中では、ちょっと全体のまとまりが弱い感じだ。とはいえ、戦間期の各ピアニストの動きなどは面白く、十分に楽しむことができた。