リストラという言葉は日本流の短縮語で、字だけを見ては意味が分かりませんし、もちろん外国人が聞いても何のことか分りません。
これはリストラクチャリングの略で、事業再編成といったような意味ですが、社会人のほとんどはそんなことは分らなくても、意味は人員整理つまり首切りのことだと理解していました。
学者は言葉の意味を文字を見ることで理解しようとするので、リストラのようにわけの分らないカタカナ語は理解できないと非難するのですが、一般の人は言葉の形がどうだとかいうことでなく、現実的な意味で受け止めているのです。
バブル経済という言葉が流行したときも、バブルのことをバルブと言っている人がかなりいましたが、valve(弁)とかbulb(電球)という意味で言っていたわけではありません。 そう言った人たちもバブル経済がどういうものか分っていなかったというのではなく、言葉を言い間違っていたのです。
つまり、多くの人は言葉の意味を全体として捉えて理解していて、文字の意味から理解しているわけではないのです。
カタカナ語は長くなると日本流に短縮してしまって、意味がなんだか分らなく例としてよくあげられるのが「コン」を使った短縮形です。
パソコンとかマザコンとかいった場合のコンは、実はコンピューターのコンだったり、コンプレックスのコンだったりして、中身が違うのに同じコンで表わされているので、コンという部分は耳で聞いて分らないだけでなく、目で見た文字からも意味が分からないというのです。
漢字にも同音異義語というのがありますが、漢字の場合はたとえばコウという発音の言葉は図のようにたくさんあっても、文字を見れば意味が分かります。
そんな風に言われれば、なるほどもっともだと思ってしまいそうですが、その議論は筋違いです。
これらのコンというのは言葉の主要部分(語根)でなくて、「共に」とか「まとめる」といった意味を付加する接頭辞です。
カタカナ語の短縮語は音声を言いやすいようにまとめているだけで、意味をまとめているわけではありません。
意味をまとめているほうが合理的ではないかという考えかたもありますが、短縮語というのは元の単語を知っているから短縮形が理解できるので、短縮形から元の単語が分るとは限らないので、音声をまとめた場合より優れているとはいえません。
英語の略語は意味単位の略語ですが、CIAのIはintelligence、FBIのIはinvestigation、ITのIはinformationで、Iという文字を見ただけでは意味が分かるわけではありません。
単語全体の意味を知っていて、その短縮形だということで使用しているのです。
漢字の「コウ」と読む字はこの例の倍ほどあるので、漢字は見れば意味が分かるといったところで、それだけの漢字を覚えるだけでも大変で、それを使いこなすともなればさらな大変ですから、漢字が使い勝手がよいとは言えません。
また英語のcomとかconと言った文字が先頭に付く語はそれこそ何百とあるので、「コン」が意味を思い浮かばせる印にはなりません。
しかしカタカナ語でコンがどんな言葉のコンか分らなといっても、英語のすべてをカタカナ語にしようというわけではないので、そんなに気にすることはありません。
学者は文字面から意味が分からないと非合理だと不満に思うのですが、普通の人は実用できればそれでよいのです。