60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

視野を狭める正字

2006-08-08 22:54:12 | 視角と判断

 図は略字とそれに対応するいわゆる正字の例です。
 略字は感じの本来の形でないので、漢字の形自体が意味を持つという立場からすれば分かりにくい文字だということになります。
 正字で漢字を覚えた年代の人の一部からは評判が悪いのですが、現在ではほとんどの人は略字に慣れていて、正字のほうが読みにくいのではないでしょうか。
 それどころか、略字であることすら意識がなく、正字だと読めないという人もかなりいると思います。
 正字のほうは画数が多く正確な書き方まで覚えるのが大変なので、書くときは略字でよいが印刷物などは本来の形の正字のほうがよいという意見もあります。
 たいていの人は、漢字の研究家ではないので、本来の字体でなければならないとは思わないでしょうし、いまさら旧字体に戻されては迷惑するのではないでしょうか。

 旧字体(正字)は字画が多く複雑なので、覚えるのが難しいだけでなく、見分けるのも難しいという問題があります。
 脳に負担をかけるだけでなく目にも負担がかかるので、歳をとってくればよけい読みにくくなります。
 たとえば、図の一番上の行の「乱 発」という文字を見た場合、行の両端の「芸」、「当」の字が大体読めるのではないでしょうか。
 多少視野が狭い人でも両隣の「済」と「樂」ぐらいは目に入り読めるはずです。
 ところが二行目の旧字体の場合は両隣の文字でさえはっきりは分からないのではないでしょうか。
 
 この場合は「乱 発」の字をぼやけさしてありますので、旧字体のほうはターゲットの文字自体が読み取りにくくなっています。
 略字のほうは字の「ボケ」に強いけれども、正字は「ボケ」に弱いのです。
 老眼などで字がぼやけて見えるとき、略字のほうは眼を凝らさなくても読み取れるのに、正字のほうは眼を凝らさなければ読み取れず、眼を凝らしても読み取りにくいため、たちまち目が疲れてしまいます。
 
 下の二行は文字が小さくなっていますが、略字のほうは正確に文字の形をとらえられますが、正字のほうは文字の形を正確に見分けるのが困難です。
 正字では、ぼやけている文字は細かい部分があいまいで分からないだけでなく、ぼやけてないほうの文字でも細かいところを見分けるのが非常に難しくなっています。
 細かな字になると、正字が本来の形であるといってもその部分が分かりにくくなってしまうのですから意義が薄れます。
 それだけでなく個々の文字に過大な注意を向けなくてはならないので、視野が狭まってしまいその結果文章の理解も妨げられてしまいます。
 漢字が成立したときには現在の活字のように細かな文字ではなかったので、複雑な字形でもよかったのかもしれませんが、現代では実用的には略字のほうがはるかに優っています。
 

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