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集中視と錯視図形

2008-08-22 23:20:27 | 視角と判断

 図はE.H.エーデルソンが考案した図形で、矢印で示されている二つの平行四辺形は同じ濃さの灰色なのですが、上と下ではかなり濃さが違って見えます。
 二つの平行四辺形の間の正方形と隣接する上下左右の四辺形を同時にコピーしたものが真ん中下の図形ですが、こうして見ると確かに上としたの四辺形は同じ濃さであることが分ります。
 この図形が左の図の中にはめ込まれると、下の平行四辺形が他の三つの四辺形より明るく見えるのはなぜかという問題です。

 まず左の図を見ると紙が折られて真ん中の部分がせり上がっているように見えます。
 そこで心理学では、この折られた紙に上から光が当たっていると、脳が判断するからだという説明をします。
 上から光があたっているので矢印で示された下の部分は陰になっていると判断するというわけです。
 同じ濃さなら陰になっている部分はもっと濃く見えるはずなので、下の四辺形は色が明るいと推定されるというのです。
 つまり視覚的には同じ濃さだけれども、陰になっていると判断するため、陰によって濃くなる分を差し引いて判断する結果、明るい色だと意識してしまうというのです。
 目は同じ濃さだと見ているのに脳は違う濃さだと判断しているということになります。

 真ん中下の図のように平面的に表示されれば同じ濃さに見えるものが、左の図のように立体的に見える環境にはめ込まれると、見え方が変るというわけですが、このように説明されると思わずそういうものかと思ってしまいます。
 ところが同じように紙を折った形で立体的に見える右の図の場合を見るとどうでしょうか。
 この場合は上から光が当たるとすれば矢印で示される二つの平行四辺形は、いずれも光が当たる面で陰になる面ではありません。
 従って先の説明で行けば同じ濃さの色なら同じ濃さに見えるはずです。
 ところが上と下の平行四辺形は同じ濃さなのに、やはり下のほうが明るく見えます。
 
 そうすると、光が当たって陰に見える部分だから、陰による濃さを割り引いた明るさを脳が感じるのだ、という説明は成り立たないことが分ります。
 真ん中下の図と上の左右の図と違う条件というのは、平面的に見えるか立体的に見えるかということではなく隣接する部分の色の違いだということになります。
 矢印の指し示す二つの平行四辺形の隣接する左右の四辺形の色の濃さを見ると、上の四辺形の左右は明るく、下の四辺形の左右は濃くなっています。
 そのため上の四辺形は濃く見え、下の四辺形は明るく見えるのです。

 ここで四つの四辺形の中央の正方形に注意を向けてジッと見ていると、隣接する上下左右の四辺形は同じ濃さに見えるようになります。
 真ん中の正方形に注意を集中すれば、真ん中の正方形との比較だけが目に入りますから同じ濃さだと感じるようになるのです。
 なにげなく見たときは他の部分との比較が目に入りますが、意識を集中できれば実態が見えてくるのです。
 


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