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注意と枠組み効果

2008-10-25 23:36:43 | 視角と判断

 横に並んだ三角の中にある小さな円は、水平線上にあり、しかも等間隔に並んでいるのですが、そのように整然と並んでいるようには見えません。
 小円を囲んでいる三角形がランダムに配置されいるために、その影響を受けて小円のほうも、位置や間隔がランダムに見えるもので、心理学で枠組み効果というふうに呼ばれているものです。
 図では枠組みの色を変えて三種類の表示をしていますが、同じ図形でも色の違いで見え方に違いがあるのがわかります。
 一番上の行は小円と枠組みの線の色を同じにしたもので、この場合がもっとも錯視効果が大きくなっています。

 小円が水平に等間隔に並んでいることを確かめようとして、小さな円に注意を向けてみても、枠となっている三角形が目に入るために、どうしてもその影響を受けてしまうのです。
 円と三角形とが同色だと、円と三角形を切り離して、円にのみ注意を向けるということが難しくなります。
 じっさい、二行目の枠組みが赤になると、円と枠組みの色が違うために、円にもっぱら注意を向けることができるようになるので、一番上の行の場合にくらべ、水平で等間隔に見えやすくなります。

 二番目の場合は枠組みの線の色が赤なので、黒い小さな円と違いがハッキリしているため、枠組みから切り離して円にのみ注意を向けやすく、その結果錯視効果が少なくなっているのです。
 ただし、この場合は枠組みの赤の色が強いインパクトを持っているので、目に強く訴えかけるため、これを無視して円にのみ注意を向けるのが困難です。
 そこで、三番目の行では色を弱くして黄土色にしています。
 こうすると円と枠組みの色が違って区別しやすいだけでなく、枠組みの色が弱いので、干渉力が弱く、円にのみ注意を向けやすくなっています。
 そのため、この場合はあまり注意を強く集中しなくても、小円は水平に等間隔に見ることができます。

 このように枠組みの色を変えれば見え方が変わるのですから、注意の向け方とか、集中の度合いによっても見え方が変わるだろうと予測することができます。
 たとえば一番上の、枠の線の色が同色の黒の場合でも、注意の向け方によって錯視の度合いは違います。
 じっさいに5個の小円に注意を集中してみると、小円は水平で等間隔に見えるようになるのですが、この場合狭い範囲に注意を集中していてはだめで、五つの小円のすべてに同時に注意を向けてみる必要があります。
 ところが五つの円のすべてに注意を向けてみようとしても、そのことを意識しすぎると、つい狭い範囲を見てしまい、すべての小円に注意を向けることができなくなり、枠組み効果にとらわれてしまいます。
 力を抜いて5個の小円全体を眺めることができるようにすれば、5個の点は水平に等間隔に見えるようになります。

 また、枠組みの三角形でなく、三角形の外側の地の部分に注意を向けると、三角形の穴が開いていて、穴の向こうの底の部分に小円があるように見え、水平に等間隔にならんでいるように見えます。
 こうしたことから、意識をしないでありのままに見ればよいのだというわけにはいかないことに気がつきます。
 錯視というと左脳で見ていることが原因のように感じますが、じっさいは小円に注意を向けたほうがよいのですから、左脳で見たほうが錯視から逃れられる場合もあるのです。

 


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