漢字の書き分けの問題ですが、Aは正しくないのはどれかという問題です。
答えは「室内を温める」としたもので、正しくは「室内を暖める」というふうになっています。
広辞苑などの辞典では「暖」は気温、空気などに、「温」は身体、料理、気持ちなどに使うことが多いとしています。
気温、空気のときは「暖」だというのはどういうことか文字そのものの意味としてそうなのか、慣例としてそうなのかハッキリしません。
たとえば「温気」という言葉があり、これは「暖気」とおなじ意味です。
温室は空気を暖めているのに、暖室とは言いませんし、冷蔵庫に対するのは温蔵庫で暖蔵庫とは言いません。
冷房に対しては暖房ですからこの場合は温房とはいいませんが冷風に対しては温風で、暖風とは言いません。。
冷水に対する言葉は温水で、暖水ではありませんが、冷水塊に対する言葉は暖水塊です。
また酒を温めるは酒を煖めるとも書き、煖は暖と同じですから、空気や気温でなくても暖は使われています。
暖衣飽食という言葉はあっても温衣飽食という言葉はありません。
要するにこういう場合はこうというような原則があるようには見えないのです。
暖は空気や気温の場合で、温は身体、料理、気持ちに使われることが多いといっても例外がたくさんあるので、字の意味から使い分けられているわけではないようです。
そうすると慣例としてこうなっているということになるのですが、室内を温めるという風に書く人が多いのなら、しいてこれを誤りと決め付ける理由はありません。
漢字は意味を書き分けるといっても、もともと漢字は日本語ではないので、日本語をキッチリと書き分けるということはありえない話で、書き分けといったところであいまいな部分があるのが当然なのです。
厳密に書き分けようとするとわけが分らなくなるということになるのです。
Bはどれが正しいかという問題で、正解は「火を付ける」だということになっています。
点は「ちょっとつける」、着は「くっついてはなれない」で、火付けという言葉があるように、「火を付ける」が正解だというのです。
「付ける」は二つのものを離れない状態にするということなので、火を燃えるものにつけるということから、火を付けるが正解だといいます。
点火(テンカ)や着火(チャッカ)という漢字熟語はありますが、付火(フカ)という熟語はありません。
「付け火」とか「火付け」というのは日本語なので、日本語としては「火を付ける」が正解ということになるのでしょう。
しかし火を付けるのは火というものを、燃えるものにくっつけるということだとすれば、科学的には間違いです。
火というものがあるという考え方は、前近代の考え方で、むしろ点火とか着火を日本語訳した「火を点ける」「火を着ける」のほうが理にかなっています(「火を放ける」というところまで当て字すると付と放で意味が反してしまいます)。
漢字の意味に忠実であろうとしてこだわっても、社会常識が変化すれば漢字の元の意味にこだわらないほうがよくなるのです。
漢字の書きわけというのもほどほどにすべきなのです。