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象形文字と擬音文字

2008-07-12 23:17:30 | 言葉と文字

 犬という漢字は象形文字ですが、読み方の「ケン」というのは犬の鳴き声をまねたもので、擬声語(擬音語)です。
 猫という漢字は、けもの偏に苗で、これは象形文字ではありませんが、読み方の「ビョウ」というのは猫の鳴き方をまねたもので、擬声語です。
 虎、馬、牛などは象形文字ですが、読み方の「コ」「バ」「ギュウ」というのは擬声語ではありません。
 犬や猫が擬声語なのに、虎や馬や牛が擬声語でないというのは一貫性がないような感じがします。
 文字の出発点が象形文字であると考えると、音声言語の出発点は擬声語ではないかと素人考えでは思うのですが、必ずしもそうではないようです。
 
 日本語では擬声語というと、大体は幼児言葉で、犬なら「わんわん」、猫なら「にゃあにゃあ」、牛なら「もうもう」といった具合ですが、大人用の言葉は「いぬ」「ねこ」「うし」のように擬声語から離れています。
 英語でも鳴き声は「bowwow」「mew」「moo」ですが名前は「dog」「cat」「ox」で擬声語ではありません。
 言葉の始まりは擬声語あるいは擬音語であろうという予想に反して、日本語でも英語でも身近な言葉で擬声語はあまりないのです。
 したがって語源意識でも擬音語あるいは擬声語がさきに来るわけではないのです。

 したがって「猫」という字を見ても。けもの偏であるから獣の一種であることはわかっても「苗」が何を意味するか見当がつきません。
 「猫」が意味が「ねこ」、音読みガ「ビョウ」あるいは「ミョウ」だとわかってもなぜ「苗」が「ねこ」に結びつくのかわからないのです。
 日本人は猫の鳴き声が「にゃあ」だと思い込んでいるので「ビョウ」と読む字を見て「ねこ」のことだと考え付かないのです。
 同じように「鴨、鴎、鶴、鵞、鴉、鶏」などの文字は鳥という字が入っているので、鳥の一種であることはわかりますが、何という鳥のことなのかは字を見ただけでは分りません。

 音読みが「コウ、オウ、カク、ガ、ガ、ケイ」だと分っても、まさかこれらが鳴き声であるとは思いつきません。
 たとえ鳴き声だとわかっても、「コウ」といえば「かも」、「オウ」といえば「かもめ」、「カク」といえば「つる」というふうには思いつきません。
 中国人の感じる鳴き声と日本人の感じる鳴き声がちがうので、漢字が鳴き声を表わしているといっても日本人には分らないのです。
 ニワトリの鳴き声をムカシの中国人は「ケイ」と聞いたのでしょうが、日本人は「こけこっこう」と聞きなしているので、「ケイ」が何を意味するかわからないで、単に文字の読み方が「ケイ」だと思うだけです。
 中国では鳥がすべて鳴き声にあわせて名前がつけられているかといえば、鷲や鷹、雀、鵜などは違いますから、字面を見ただけで分るというものではありません。
 やはりそれぞれについてその文字が何を意味しているかを記憶しなければならず、記憶の負担が大きいのです。