60歳からの視覚能力

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意識的な情報処理

2007-04-15 23:12:00 | 文字を読む

 図はT.ノーレットランダーシュ「ユーザーイリュージョン」から。
 左の表はドイツのキュプフミュラーのまとめた表で、一秒間に意識的に処理される情報量を示したものです。
 人間が外界から受け取る感覚的な刺激による情報量は一秒間に1000万ビット以上とされていますから、意識的に処理された情報量というものははるかに少ないように見えます。
 このような数字を見ると、意識的な情報というものはごく限られたもので、無意識的に受け取っている情報を処理すべきだという意見が出てきたりします。
 また、意識的な処理は主として左脳によるもので、無意識的な処理を右脳が行っているので、右脳の情報処理は左脳の情報処理の10万倍以上とか100万倍以上とかいった主張まで飛び出してきます。

 人間が受け取っている感覚情報と、人間が処理している意識的な情報というのは同じくビット数で表現されているので紛らわしいのですが、まったく質の違った次元のものなので比較する意味がありません。
 たとえば視覚の場合、視神経は両目で200万本以上あっても、その一つ一つが受け取る情報を意識できるわけではありません。
 意識は色が赤いとか青いとか、形が四角とか丸とかいったふうに受け取ります。
 赤とか青とかに分ける分け方の数をビット数であらわして、そのビット数と視細胞の受け取る刺激の数と比べても意味がないのです。

 目が受け取る光の情報量ということで言えば、人間とサルにはほとんど違いがないことを考えれば、受け取る感覚情報の量にこだわるのは無意味なのがわかります。
 サルをことさらにバカにするわけではありませんが、意識的な情報の処理量でも内容を無視すればサルと人間と差があるわけでもありません。
 光刺激に対して特定の動作をするということで計るのであれば、サルも人間も変わらないことが心理学の実験から見て取れるからです。

 右の図はドイツのH.フランクによるもので、年齢によって一秒間に処理できる意識的な情報処理量を示したものです。
 たとえばなるべく速く音読をさせると思春期後半が一番速くできて、その後は年齢を重ねるにつれ遅くなることが示されています。
 この場合意味がわかるかどうかということは関係ありません。
 意味がわからなければ前に読み進めないということでは、個人差が出過ぎるので、年齢的な影響を調べるのなら、誰にでもわかるやさしい内容で読ませて速度を調べるということになります。
 あるいは意味の不明な文章を、わからなくてもともかく音読させてスピードを比べるというようなことになります。
 実際にものを読むときには、意味を理解することが目的ですから、単純な情報処理速度を比較しても意味がないのです。