図はT.ノーレットランダージュ「ユーザーイリュージョン」から。
デンマークの学者、フリーベルィとローランドの研究で、異なるタイプの思考をしているときの脳血流を調べたものです。
一番左は50から順に3を引いていく暗算をしたとき、真ん中はデンマークでは誰でも知っている押韻詩句を一語おきに思い出すとき、さいごは被験者の家の玄関を出て、差し掛かる十字路を交互に曲がっていくところを想像するものです。
どの作業もひとつの段階から次の段階へ進むという作業で、自分が今どの段階まで作業を進めているかを意識しながら作業をしているので、単純な反応でなく、記憶力と思考力が同時に要求されます。
この中では計算より言葉の使用のほうが脳に流れる血流量が多く、さらに道筋のイメージ化のほうが血流量が多くなっています。
これだけでもって作業によって使われる脳の場所や、血流量がわかるとはいえません。
人によって得意不得意があったり、与えられた課題が計算作業、言語作業、イメージ作業全体を代表するものかどうかわからないからです。
個人差というものがあって、それは能力差だけでなく経験の違いにもよるので、よほど大勢の人間について調べないと、偏った結果しか得られていない可能性があるのです。
とりあえずこの結果からうかがえるのは、イメージ化作業が意外に多く脳を使っているということです。
よく単純計算や音読が脳を活性化するので、ボケ防止には単純計算や音読がよいとされるのですが、脳血流を盛んにすることが目的なら、イメージ化作業のほうが有効なのかもしれないのです。
思考といえば言葉を使うと普通は考えられていますが、イメージ操作のようななものも血流量の大きさからすれば、別のタイプの思考と考えられます。
計算にしても、言語活動の一部と見られるかもしれませんが、言葉を使わない動物でも数を覚えているようですから、言葉とは違った思考の可能性もあるのです。
人間の脳が特別大きくなった原因として、言葉の使用が最大の原因とする説がありますが、上の結果からすれば疑問です。
さらにいえば、言葉を使うということがイメージ化作業などと独立なものかどうかも疑問です。
人間だけが音声言語を使っているからといって、人間だけが思考力を持っていると言うわけにはいかないのです。