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視線の動かし方で見え方が変わる

2006-07-21 22:38:42 | 視角と判断

 横に並んだ二つの円形は左側が凸型に見え、左側がくぼんで見えます。
 左側の図形は右側の図形を上下反転させたものなのですが、上が明るいほうが出っ張って見えます。
 月面のクレーター写真を見たときに、こうした現象を経験するのでクレーター錯視などと呼ばれているものです。
 このような現象がおきるのは、光が上から来るという経験によって、上が明るいほうが凸面であると解釈しやすいからだと説明されています。
 明るい部分が進出して見え、暗い部分が後退して見えるというだけでなく、「光が上から来るという経験によって上が明るいと凸面だと思ってしまう」というのが心理学的な説明の特徴です。
 単に明るい部分が進出して見え、暗い部分が後退して見えるという理学的な解釈でなく、心理的な構えがものの見え方を変えると解釈するのです。
 
 ところで、図を見るとき視線は図形のどのあたりにむかうでしょうか。
 たいていの人は図形のうえのほうから見ます。
 下から上のほうを見ていくのではなく、上から下のほうを見ます(X→Y)。
 図の場合最初に上のほうを見るので、左の円は明るい部分が最初に目に付きその部分が進出して見えるので、前に出っ張っているように見えます。
 右の円は最初に暗い部分が見えるのでへこんで見えるのです。
 そこでこの図を下のほうから上のほうに向かってみていったらどうでしょうか(Y→X)。
 そうすると右の円は凹型でなく凸型に見えます。
 要するに視線の動かし方によって見え方が違ってくるのであって、心理的な解釈で見え方が決まるとは言い切れないのです。

 この図は明るい部分が上下に来ていますが、90度回転させて横から光が当たった場合はどうなるかといえば、やはり立体感は出てくるのですが、左から見る癖のある人は明るい部分が左側にあればそれが凸型に見えます。
 見るときにそれと意識しなくても見方に癖があり、その結果見え方が変わるのですが、上下の場合はほとんどの人が上から下に見ていくので上が明るいほうが凸型に見えるのです。

 右側の図は8の字なのですが、左側の8は上のほうがわずかに小さくなっています。
 右の8は左の8を逆さまにしたものなのですが、大小の差がはっきり見えるようになっています。
 この場合も上下から上へ視線を動かしていくと、左の8は下の部分が大きく見えるようになり、右の8は上の部分がさほど大きく見えなくなります。
 ものを見るときには視線を固定してみるわけではなく、視線を動かしながら見ているのでこのように見え方が変わるのです。
 視線の動かし方には何らかの心理的要因があるかもしれませんが、ものの見え方は網膜の上に映った象が基礎となるので、心理が勝手に変えてしまうわけではないのです。