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輪郭のイメージ

2006-07-20 23:26:51 | 言葉とイメージ

 図Aは、この中に埋め込まれている星型を探す問題です。
 紛らわしい線や塗りつぶし部分があるため、すぐには見つけにくくなっています。
 大きさが示されていないのですが、星型がどんな形かはたいていの人が知っているので、場所が分かればはっきりそれと認識できます(左下)。
 わかりにくいのは、星型のイメージに部分的に合致する場所がいくつもあるのと、線が錯綜していて、視線がスリップしやすいためです。
 これは実際にある輪郭線が、妨害刺激でかくされているのを探し出すという課題なのです。

 Bはいわゆる主観的輪郭というもので、パックマンで囲まれた部分が白い三角形として浮き出ているように見えるものです。
 実際に描かれているのは三つのパックマンだけで、三角形の辺は描かれておらず、実際にはない辺があるように見えるので主観的輪郭と呼ばれているものです。
 主観的とはいわれても、ほとんどの人が三角形の輪郭を感じ取るだけでなく、サルや犬、猫、ネズミなどの動物もこの三角形の輪郭を感じ取るようですから、主観的というよりも客観的基礎がある輪郭だということになります。
 白い三角が浮き出て見えるということは、黒いパックマンが後退して見えるということにより遠近感が感じられるためだと考えられます。
 黒いパックマンが後退して見えるために白い三角形が浮き出て見えるといっても、三角形の辺は実際には描かれていないのですから、見る側の脳が補完しているのです。

 Cは何に見えるかという課題で、答えは象なのですが、この場合は象だとはっきり分かる輪郭線があるわけではありません。
 象のイメージを持たない人には無論わからないのですが、象のイメージを持っている人でもはっきり分かるとは限りません。
 図自体には輪郭線がないだけでなく、写実的な形でもないので、特定のイメージと重ね合わせるということも困難です。
 図を見ているうちにふと思いつくという点では、インスピレーションが働いたような気がするかもしれません。
 象という言葉を聴けば、なるほど象かと、象のイメージを図からつくりあげることができたりします。
 この場合は象の固定的なイメージを持っていて、それと図が一致するというのではなく、図をヒントにしてイメージを作っていますから、図と言葉の相互作用でイメージがつくられています。実際には存在しない輪郭ですが、知識や経験を共有することで感じられるので、共同幻想とも言うべきものです。