60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

漢字混じり文の方が理解しやすい

2006-07-14 22:56:40 | 文字を読む

 御領謙「読むということ」によれば,日本語の文章は漢字かな混じり文を読む場合が一番速いそうです。
 図のような文を一文づつランダムに示して読ませ、ひとつの文章ごとに正文か誤文かをキーを押して答えさせて反応時間を計るというテストで15セット90文の平均を取ったものです。
 速く読み取れれば速く答えられるということで、文が示されてからキーを押すまでの時間を読み取り時間とみなしています。
 これはテストを受ける人たちが示される漢字を十分知っていることを前提にしているので、漢字を十分に知らない場合は漢字かな混じり文の読み取りが不利になります。
 したがって、漢字まじりの文の読み取りが一番速いという結果は信頼してよいと考えられます。
 この本にある文字単位の読み取りテストでは(たとえば題vsだい、毒vsどく、、など)漢字よりかなのほうが読み取り速度が速いという結果になっていますから、文章になったとき漢字混じり文が速く読めるというのは不思議な現象ではあるのです。

 上の例は黙読の場合だったのですが、これを音読させた場合はかなの場合も漢字混じり文の場合も読みの時間に差がなくなるそうです。
 音読の場合は口を動かす時間がかかってしまうので、頭で読み取る時間が隠れてしまうためでしょう。
 漢字混じりでも、ひらがなでも音読をしている間に眼は先を見て読み取るので、音読時間には差が出ないものと思われます。

 黙読の場合で、漢字混じり文のほうが読み取りが速いというのは、このテストでは読んだ文章が正しいか間違っているか判断させているので、単純な文字認識ではないからです。
 文字を読んだ上で文の意味を判断しなければならないので、理解し判断するという過程が混じっています。
 漢字混じり文のほうが読み取り速度が速いということは、漢字混じり文のほうが文章の意味が分かりやすく、判断しやすいということを示しているのです。

 文字の読み取り時間というと、瞬間的に文字を示し、どのくらいの提示時間で読み取れるかというテストもありますが、この場合は文字が消えた後、脳が認識処理をしている時間を計らずに提示時間だけを問題にしたものです。
 提示時間だけなら0.1秒以下ですむのですが、光より脳の神経パルスの伝達速度が遅すぎるので認識速度というのは、脳の処理スピードが問題なのです。
 漢字一文字を認識するのに文字の提示時間は1000分の1秒以下でもできるのですが、なんという文字かを脳が確認するのには提示時間の何百倍もかかってしまうのです。
 文章の読み取りは、文字を見て単語を確認して、さらに文章として判断するといういくつもの過程を含んでいるので、脳の処理速度が問題で、この部分で漢字混じり文が優位に立つということが分かります。