上の図は埋没図形の例で、何に見えるかと言われても、なかなかわからない人が多いようです。
輪郭が背景に同化してしまっているため図の形が見えてこないためです。
答えは「ダルマチア犬」で、ダルマチア犬を知っている人なら、言葉を聴いてなるほどと思うかもしれません。
知らない人はイメージがわかないので、言葉を聴いても輪郭がわからないかもしれません。
輪郭が明示されているわけではないので、輪郭を補完しなければならないのですが、ダルマチア犬のイメージを持っていなければ補完しようがないからです。
右側の図は輪郭線を補完したものですが、輪郭線が示されれば地面に鼻を近づけた犬をうしろから見た図であることが分かります。
これはいわゆる主観的輪郭とは違います。
いわゆる主観的輪郭の場合は、誰にでも分かるもので、パックマンに囲まれた三角形の場合などは、サルとか犬とか猫などに見せても分かるそうで、金魚に見せた場合でも分かったという実験もあるそうです。
この図の場合は、誰にでもすぐ分かるという種類の輪郭ではなく、経験や知識に結びついたイメージに基づく輪郭です。
見ただけですぐ思い当たる人もいますが、ひとによっては何度か見ているうちにふっとイメージがわくという場合もあります。
ただ見るだけでは、何度見ても見えてこなかった人でも、言葉を聴いてイメージが呼び起こされ、そのイメージと比較してみて思い当たるといった場合があります。
この場合は「百聞は一見にしかず」ではなく、「百見は一聞にしかず」ということになるのですが、感覚だけでは見えてこなかったものが、言葉によって見えてくる場合もあるのです。
いちど言葉で「ダルマチア犬」と聞いて輪郭がわかってしまうと、次からは右図のような輪郭線がなくても左図を見ると、そのように見え、こんどはそれ以外の見え方ができにくくなります。
言葉によるイメージ化がはたらいて、他のイメージが沸きにくくなるためです。
そうなるとあいまいな形であれば、言葉によって間違ったイメージに誘導される可能性もあります。