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脳の判断なのか

2006-03-15 22:34:19 | アナログとデジタル
エーデルソン錯視の変型判です。
線で示した部分はすべて同じ明るさなのですが、左の図形の場合は上の四辺形が暗く、右の図形の場合は下の四辺形が暗く見えます。
左側の図形の場合、下のほうが陰になっているので、上と同じ色ならもっと暗く見えるはずだと脳が無意識のうちに判断して、この四辺形は本当は上の四辺形より明るいと感じるので、明るく見えるのだという説明がされています。

「なるほど」と説得されそうな説明ですが、何か回りくどくて変だなと感じられるのではないでしょうか。
ためしに線で示している四辺形の両サイドの色を上下で交換してみたのが右の図形です。
なんと線で示した四辺形は色を交換したわけではないのに、色の濃さが逆転して見えるではありませんか。
二つの図形は並んでいるので光の当たり方はどう方向に見えるはずですから、右の図形の場合も下が陰になっていると脳は判断しているはずです。

してみると、陰になっていると脳が無意識のうちに判断するために見え方がこうなるのだという説明は事実ではないということになります。
陰になっていると判断するかどうかで見え方が決まるのではなく、両サイドの色によって見え方が変わっているのです。

脳の判断で見え方が変わるというタイプの説明は、遠近法の場合にも見られます。
「同じ長さのものが遠くにあるように見えれば、実際はもっと長いはずだ」と脳が判断するために、近くにある同じ長さのものより長く感じるというのです。
しかし、この場合は遠くにあるように見えるのは焦点距離が変わっているためです。
実際長く見えているのであって、長いように感じているのではありません。

これらは見え方の事実の説明ではなく、「このように考えれば納得しやすい」というアナログ的な説明にすぎず、条件を変えても成り立つ説明なのか検討されていないので、うまく当てはまらない例が出てきてしまうのです。