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ルビとレトリック

2006-03-28 23:16:56 | 言葉と文字

フリ仮名は本来、難しい漢字の読み方を示しただけのものです。
もともとは音読みのフリ仮名だったものが、訓読にも使われるようになると、訓読は漢字の翻訳なので、読み方というより、意味を示すという使われ方をするようになっています。
そうすると、もとの名前にたいして、ルビを振ってあだ名とか、通称を示したりすることも出来ます。
話し言葉では本名で呼ばず、あだ名で読んだりすることがありますが、書いた場合は何を指すか分かりにくくなるので、本名を書き、それにあだ名をルビで振って分かりやすくすることが出来ます。

講談などで豊臣秀吉をサル、徳川家康をタヌキなどということがありますが、本では単にサルとかタヌキと書かず、秀吉とか家康と書いてルビを振ったほうが分かりやすく、また雰囲気も出るのです。
別名をルビで振るということは、隠喩というレトリックをルビで表示することですが、そうなるとほかのレトリックもルビで表示するようになります。
「密偵」に「いぬ」というルビを振ったり、「ヤクザ」に「ダニ」というルビを振ったりするだけでなく、自動車(クルマ)、食事(メシ)などのように部分で全体を現す例にも適用されます。
このほか、一万円札(ショウトクタイシ)、米国政府(ワシントン)などは、一般的に理解されているレトリックですが、さらに進めば一般化されてはいない独自の意味づけに使うことも可能になります。

たとえば「過去」と書いて「カコ」とルビを振ればただの読み方の表示に過ぎませんが、「カコにすがる」を「栄光(カコ)にすがる」とルビを振れば、特殊な意味合いの過去をしめすことができます。
さらに「挫折(カコ)からたちなおる」とか「傷跡(カコ)にこだわる」という特定の過去のあり方を表現したりすることが出来るので、新しい表現が可能になります。
音声で「カコ」と表現されれば、普通の漢字表現では「過去」となりますから、意味として不適当とはいえなくても物足らないと感じがするとき、二重表記で意味を追加することが出来るのです。

日本以外では単語の並べ方は文法に従うことになっていて、二重表記などという変則技はないようです。
日本語は漢字にルビを振ったりしたために、文法外の語法を導入してしまったので、顔文字を使ったりすることに抵抗がなくなっているのかもしれません。