蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

親族の基本構造ムルンギンの親族体系 2

2021年05月24日 | 小説
(2021年5月24日)Murngin族は2 の半族、8のサブセクション(sous-section)に分かれる。
原文にある半分moitieを半族と訳した、他著書(構造人類学など)ではこうした形式を「支族Clan」とする場合が多いが、底本(Warner著)にhalfとあったのだろう。サブセクションをhordeと言い換えている。この語は中央アジアのnomade(遊牧)民を意味していたが、民族誌学で地域の限定を外し移動する民族を表し、また移動せずに農耕採取、狩猟で生活する比較的小規模集団にも用いられてもいる。
Murnginを理解するに族の規模、定住か移動かは重要となる。悲しき熱帯でレヴィストロースが紹介したNambikwara族は半定住半移動の生活を送る。規模を20人前後、4~5家族の「バンド」としている。Hordeの概念はバンドよりは大きいが村落に劣る。そこを拠りどころにMurnginの規模を推論すると、1のhorde単位が100人20家族ほどで構成されると考えた。8の半族hordeで計1000人未満の人口か。この規模であると狩猟のみの生活は難しい。定住(小規模農業と狩猟採取)の族民に結びつく。後に述べる親族の構成などと辻褄が合いそうだ。8hordeが分離して居住、全体でそれなりに広い地域を占める。
推測に過ぎないがこれを前提にする。
下図は半族の構成。Yiritcha、Duaの半族が各々4のサブセクションを有する。中央分割線に両方向の矢印が重なる意味は女の交換である。女は嫁として中央線を越すが、男は生まれた半族にとどまる。




Yiritcha…半族は男系、たすき状にかかる楕円破線は女系の半族(moitie matrilinaire)でこちらには呼称が無い。MとLとしてWarnerが記号化した。水平の四角は族内婚集団。Ngarit (a1)を基準にしてBalang(b1)と女を交換するが、時にはBuralang(B2)とも交換する(青の破線)。故に四角にしたが、斜めの交換は例外とする見方もあって、その論を汲めば四角は縮小する(赤の破線)。図が煩雑になるので上の4サブセクションのみを図式化したが、下の4サブセクションも同様の女交換を実施している。


Ngarit(a1)がBalang(b1)の嫁をもらって子をなす。その子はa1にもb1にも属さない。Bangardi(c2)に里子に出される。ここが<一風変わった(aberrant様変わり、理屈外れ,英語ではoff pattern)前回>制度である。


親族の基本構造ムルンギンの親族体系 2の了(2021年5月24日)

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