蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

野生の思考LaPenseeSauvage トーテミズム分類 1

2020年07月22日 | 小説
Chapitre II La logique des classifications totemiques
トーテミズムの論理

序段に神話と寄せ集め技術の比較が置かれる。前章La science du concret具体科学では魔術と寄せ集めの比較(7月21日投稿の比較表を参照に)であった。ここに神話を持ってきたのはトーテミズムを導入する布石である。

神話と寄せ集めの共通点でanalogie類似性として万華鏡を絶妙にも引用する。

万華鏡

>Cette logique opere un peu a la facon du kaleidoscope : instrument qui contient aussi des bribes et des morecaux , au moyen des quels se realizent des arrangements structuaux<ここでの論理展開は少しだけだが万華鏡に喩えられる。この器具は(神話、寄せ集めと)同じにガラクタ破片を用いるがそれらを構造的に(あたかも意志が決めるかに)整頓する。(51頁)

万華鏡は皆様ご存じ、手で握れる太さの紙筒。両端は塞がれる。一方の端に採光の色ガラス、もう一方には覗き込みレンズ。覗いて廻してあら不思議、色鮮やかで幾何学的な模様が広がる。絡繰りを知るよしもないが、色とりどりのガラス破片(今はプラスチック)が筒内を浮遊し、その重なりが幾何学模様に反映される仕組みである。
arrangementsなる語の意味を後に考察する。

それら一つ一つを取るとクズ破片、それが万華鏡の論理(絡繰り)で統制のある構造に化ける。この点が神話、寄せ集め技術と似通う。両者には絡繰りならぬ、論理があるわけだ。

破片が作品に変質する。万華鏡的絡繰りは神話の形成と同じとレヴィストロースが曰う。写真はいずれもネットから。

引用文頭の「Cette logiqueここでの論理」は前文の内容をさす。

>Leur necessite n’est pas simple et univoque ; elle existe pourtant , comme l’invariance , d’ordre semantique et esthetique , qui caracterise le groupe des transformations auxquelles ils se pretent , et dont nous avons vu qu’elles n’etaient pas illimitees.<(同)

leur(それら、かれら)はこの文の前の「contraintes不自由、制限」を指す。ガラクタを集めて何やらを形成しようとしても、表現には制限があるとの意味合い。
ilsは同じく前文のleurs paliers d’utilisationを受ける。leurは神話イメージ及び寄せ集められた素材。すなわち神話や寄せ集め技術の表現の場。神話の口承内容や作品となる。

すると上引用の訳は;

表現においてなにがしの制限が課せられるが、それは単純でも、一言で言い表せる内容でもない。意味論としてかつ美学の見知から、神話では断片の集まり、寄せ集め技術ではガラクタが変容する過程を決めつけている。それは確かにある。変容の様には無制限ではないとは既に見た。

万華鏡の絡繰りは神話では意味論の制約、寄せ集め技術では美学に取り変わった。こうした制限をarrangementなる語に言い換えるのだが、その文節を引用する前にちょいと整理を;

contraintes表現における制限でこれは意味論(辻褄の合わない突拍子もない組み合わせは、喩え神話でも避ける。別の言い方をすればimages(神話イメージ)には訴え(message)が必ず潜む。この考え方は次著作の神話4部作に引き継がれる。寄せ集め技術の作品は時にmythopoetique(神話詩的)表現でおどろおどろしいが(facteur Chevalのお城、7月15日投稿)そこにも美学的配慮が窺える。

le groupe des transformations幾つかの表現(ガラクタ素材)が集体となって訴えある1の作品に化ける過程。

arrangement整え作業、ここに人の意志が表れます。その文を;

>sous un autre rapport, ils(=fragmants) doivent en avoir suffisament pour participer utilement a la formation d’un etre d’un nouveau type : cet etre consiste en arragement ou, par le jeu de miroir , des refrets equivalent a des objets , c’est-a-dire ou des signes prennent rang des choses signifiees ; 後略(51頁)

訳;(引用の前文に寄せ集めのガラクタや神話の断片は、それらを個々に見ると意味を持たない(Ils n’ont plus d’etre propre=本来持っていた存在を失している)破片に変わっているとして)
本来とは別の関連の中でそれら破片は(前出discours=対話、元々の製造者がその部分に意味が付せられるように計算して作る)、意味合いを十分所有し新たな応用の中で1の存在として形成されてゆく。新たな存在は整え作業に生まれる。鏡の効果により反射光が作品となる。同じくこの整え作業にては、(神話の形成過程での) 意味論的配慮(des signes)が意味される物(神話の断片)を順に定めて取り上げている。それと同じである。

この語がclassification(分類)につながるキーワードです。続く
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