続「とのむら通信」ブログ版

前島本町議会議員・外村敏一(平成29年4月29日付けで引退)
日々の思いや議会傍聴の感想など引き続きお伝えします。

厚労省の考える年金改正は的を得ているのか?

2019年01月28日 | しっかりした社会保障改革を求める


厚労省は公的年金の受給開始年齢を75歳まで繰り下げられるよう検討しているというが、
果たしてその目論みは正しいものかはなはだ疑問を感じる。狙いは受給開始年齢に達した人が
実際に受給する年齢を1年でも遅くしてくれたら年金財政がトータルとして楽になるとの見込み
からであろう。目先のことしか眼中にない愚かな短絡的発想としか思えない。

しかし私はこの改革案には当初の目論みと大きく外れる公算が強いと考えている。何故なら今や
100歳以上の人は昨年時点で約7万人と急速に寿命が延びてきているという事実があること。
そして平均寿命が延びることと65歳以降も働いて年金の支えてになってくれる人が増えること
とは必ずしもリンクしないことが考えられるからである。下手すれば年金財政の更なる悪化を招く。
もし75歳までの繰り下げを導入するのならその資格対象は「75歳まで働いた人」に限定すべき。

今回の改正案のように75歳まで受給を繰り下げれば約2倍の年金がもらえるなら家計に余裕の
ある人や富裕層は単に75歳になるまで受給を延ばすだけでその間は自前の蓄えで悠々と過ごし
働くことはないと考えるからである。そうなれば厚労省が想定する65歳以降も働き手として
年金財政の支え手側になってくれるというシナリオは崩れる。しかも富裕層は何の憂いもなく
悠々な生活をしているので益々健康でより長生きする人の割合が多いと考えるからである。
いわば今回の75歳以降に受給開始すればおよそ2倍の年金がもらえるという改正案は正に
高収入や富裕層のためのものになりはしないか。そのことをよく考えて検討して貰いたい。

逆に貧困層は日々の生活に追われ、減額覚悟ででも受給開始年齢に達する前の前倒しを望まれる
事態も起こっているのである。格差が益々進んでいる上に更に助長する政策と言わざるを得ない。

こんな小手先の改正案よりもむしろ根本的な社会保障制度の見直しを早急に実践する必要がある。
今の年金制度には大きな欠陥がある。一つには約3割から4割の人が払っていないという現実を
放置していること。よって受給開始年齢になったときに本当に貰えるのかという確証が得られない
危機感があること。そして年金も払わないでいて最後には生活保護を受ける人が沢山いるという
矛盾した制度の現実があること等。
徹底して不払いを許さない仕組みを作ること、生活保護法と年金制度との関係を矛盾なく整合
させること、日本人と外国からの移住者などとの間にしっかりとした制度的棲み分けを行うこと
等が急がれる。現代に合った「頑張った者が報われ、不公平な扱いを受けない」制度設計を急ぐ
必要がある。