肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『乱歩地獄』、観ました。

2006-08-04 20:56:08 | 映画(ら・わ行)

乱歩地獄 デラックス版 ◆20%OFF!

 『乱歩地獄』、観ました。
江戸川乱歩の怪奇世界を映画化したオムニバス。荒野を歩き続けていた男の
意識が、やがて錯乱の淵へ堕ちていく「火星の運河」。殺人事件の現場に残された
和鏡の謎を追う、美青年・透と明智小五郎の物語「鏡地獄」。廃墟でひっそりと
暮らす、胴体だけの夫とその妻の奇行を、一人の男が屋根裏から監視し記録する
「芋虫」。恋焦がれる女優を殺害した運転手の異常な執着を描く「蟲」。4つの
物語は、やがてひとつの大きな流れへと向かっていく‥‥。
 いわゆる“アート系”のヴィジュアル怪奇ミステリー。まぁ、“奇才”江戸川
乱歩の原作からして、ある程度こうなるだろうと予測はできた。だけど、故意に
“不安定”を装うカメラの構図と、“鏡の反射”を多用した映像は、あまりに
“凝り過ぎ感”が行き過ぎて、置いてけぼりを食らったようで鼻につく。思うに、
この手の映画で注意しなくちゃいけないのは、観る側にやり過ぎ感を与えない、
一歩手前で踏み止(とど)まれるかどうか。残念ながら今回はそのデッドライン
(死線)を超えてしまったように感じちゃう。多分、本作の正しい観方としては、
大衆向けの正統派ミステリーとしてではなく、一癖も二癖もある“コアなカルト
ムービー”として楽しむべきじゃないのかな。
 それにしても、久方振りに垣間見る“乱歩ワールド”は、以前にも増して
“フェチでアブノーマルな誘惑”がいっぱい(笑)。SMプレイに始まって、近親相姦、
覗き趣味にストーカー、挙句には死体愛好まで‥‥、やっぱりね、チョット
今のオレには刺激が強い(笑)。更には、ネチネチした男女の偏愛、アングラ的な
エロティズムと破滅願望とがくい込むように絡みつき、オレの思考を麻痺させて、
最後に残った理性さえも奪い去る。結局のところ、江戸川乱歩の世界とは、
人間の持つ“闇の部分”にスポットを当て、その隠された本性と凶暴性、心の
渇きとタブーへの憧れから始まっているんだろう。言い換えれば、この映画では、
その“ヤバい世界”に肩までどっぷり浸かり、さぁ何でもござれ、もうどうにでも
して頂戴!!、一緒に“堕ちていく快感”を味わえるか否か。勿論、オイラとしても
その種のこと(?)に全く興味がない訳ではないのだけど、失うもののリスクが
でか過ぎて‥‥うーん、あんまり関わり合いたくない世界やなぁ(笑)。