もう一冊、小中学生向けに、すばらしい物語をご紹介して締めくくりましょう。
主人公アルの母親は、アルを産んだ時に亡くなってしまいます。アルの父親シド自身もそれを受け入れられず、アルには“ママは仕事で世界中を回っている” とウソをついてしまいます。そして“雪が降れば「ママ」は帰ってくるんだ”と。
「ママ」を知らないアルは、ジャズピアニストのシドといつも旅をしています。実は、シドは雪の降らない南の地方をめざしているのですが、アルはきっと「ママ」がどこかにいると信じながら、父に付いてゆきます。
そんなアルをあたたかく見守るシドですが、アルの成長とともに、自らのウソに苦しみ、生活も徐々にすさんだものになってしまいます。酒びたりになり、演奏もうまくいかず、もがきます。
ある日、アルは知り合った女の子に、“あなたのお母さんは死んでいて、お父さんはうそをついているんだ” と言われて、父親シドを問い詰めますが、それでも、シドは自分を信じるようにさとします。父の言葉に安心したアルですが…、
翌日の朝、クリスマスの日、朝起きると、その地方に30年ぶりに雪が降っているではありませんか。ママが戻ってくるとはしゃぐアル。八方ふさがりのシド。いったい最後に「ミラクル」奇跡は起こるのでしょうか。
旅を続けながら、絶対に「ママ」 に会えると信じてやまないアルの心の純粋さ、アルを大きな愛で包み込むシドや、アルの “見えない友人”の姿に感動します。
「奇跡とは目に見えるものではなく、心の内部に降る雪のようなものであるかもしれない。それはやがて積もり、春の訪れとともに溶けていく」 すばらしいエンディングを読んだあとに続くこの言葉こそ、本書のメッセージだと気付かされます。
ページごとに挿入されるイラストも、先の不安を暗示しているようだったり、喜び、悲しみを表現しているようだったり、不思議な雰囲気をかもし出し、ストーリーにぴったりだと感じました。
忘れてしまいがちな大切な何かをきっと思い出させてくれる静かな感動のファンタジー。子どもより、むしろ大人に読んでもらいたいなぁと感じる作品です。
http://tokkun.net/jump.htm
ミラクル新潮社詳 細 |
『ミラクル』辻仁成著
新潮文庫:169P:380円
■■ さぁ、明日から9月、2学期または後期です。■■
いよいよ読書の秋です! (このブログは年中読書ですが(笑))。気合を入れて、良書をさがしておきます。お読みいただきありがとうございました。ブログランキングです。よろしければ、夏の終わりの1 クリック、お願い致します →
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