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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『小3までに育てたい算数脳』 高濱正伸

2010年03月15日 | 中学受験関連【算数・国語参考書など】


小3までに育てたい算数脳.gif


昨日、TBSの情熱大陸で本書の著者、高濱氏が取り上げられておりました。同じ塾講師という立場ですから、なかなか興味深い内容でした。
http://www.mbs.jp/jounetsu/2010/03_14.shtml


そこで以前ご紹介した本書を再度取り上げてみたいと思います。

高濱氏のお名前やご意見は時々、いろいろなところでお見受けしておりましたが、著作を読むのは初めてです。こんな題の本を出すとは意外で、いったいどんな英才教育をするのだろうと思って読みました。


やはり、予想通り、早期教育のようなものを勧めるのでは全くなく、むしろ子どもが小さいうちに、外で遊べ!というような、まっとうな自然体験や理想的な家庭環境、積み木遊びなどから生まれる刺激が、あとになってからでは難しい空間把握能力や好奇心を育てるのだというような内容です。


高濱氏は以前から百ます計算に批判的でした。本書の帯にも“「百ます」だけでは子どもは伸びません!”とあります。本当の算数の楽しさをゆがめられたように感じたのではないかと推測します。

確かに“百ますブーム” が行き過ぎだった面は否めませんが、ちょっと違ったスジからの批判だと私は感じましたので、その発案者の陰山先生の著作『本当の学力を付ける本』を紹介し、百ます計算をどう考えるべきかを述べました。よろしければご覧下さい。


本書では、計算能力とは違った面の算数の力について述べられています。非常におもしろい一冊ですが、親野智可等先生(『親力で決まる』 『「ドラゴン桜」わが子の「東大合格力」を引き出す7つの親力』と同じような、家庭教育重視の立場です。



唐突ですが…、例えば、本書で紹介されている灘中学の算数の入試問題です。


  『次の □ にふさわしい数字を入れなさい』 

「平成元年(昭和64年)は西暦1989年である。昭和の時代には、西暦の年数が昭和の年数で割り切れる年は □回 あった。」


ちょっと見、難しいです。とても。


昭和と西暦との数の差はいつも 1925 (例えば西暦1945年は昭和20年:1945-20=1925) ですから、この問題は

1925の約数のうち、64以下のものの個数を答えよ」 と言い換えなければ解けません。 逆にそれがわかる子には簡単です。

 ちなみに答えは、1・5・7・11・25・35・55の7つですから、 答え 7


これは国語能力や発想力がポイントですが、そういう力は百ますでは付かないというわけです。そりゃそうですね。他にも開成、麻布、桜陰などの有名中学の入試問題をいくつか上げて、どういう能力が求められているかを解説、それを付けるには幼いうちに家庭で…、という調子で進みます。


一方、『強育論』や『合格パズル』『強育パズル』 などの宮本哲也先生はパズルなどを用いた、独自のメソッドで合格実績をあげていますが、家庭教育に関してはほとんど言及しませんね。入塾テストさえないのですから、同じ算数の専門家とはいえ高濱氏とは対照的です。


こちらのブログで昨年春に 『算数オリンピック問題集』 をご紹介しましたが、高濱先生は、本書でも算数オリンピックの問題を引用し、やはりそういったものに対応する力を付けるのは、家庭でのしつけや子育ての工夫、そして小3までの遊びの中で身に付けていかざるを得ないという主張です。実際に高濱先生は算数オリンピックの問題作成委員、解説などを担当されています。


 ところで…、


田舎育ちの私も、小3までの“自然体験だけ”なら人後に落ちないと自負しております。家の周りは田んぼ、畑と山ばかり、塾はもちろんテレビゲームもなかったのですから。で、確かに数学は英語以上といっても良いほど好きです。

が、算数脳にはなっていな…(笑)ような気がします。また、当時一緒に遊んでいた連中はみな “超算数脳” のはずですが…、ヤッパリ…(笑)。


親野智可等先生の著書がお好きな方は、本書も大変参考になり、秀逸な教育論と感じるでしょう。私もそう思います。大変気に入りました。つまり大変良いことが書いてありますのでお読みいただきたいのですが、ちょっと書名から受ける印象が冒頭で書いたような、早期教育を促すのではなく、むしろ逆だということを頭にいれておいていただきたいと思います。


高濱氏をご存じなく、本書を購入し、読まれるような親ごさんは、教育に関心があり、問題意識があり、まぁ不安もおありかと思います。


こういった本を読むときは、受験生が学習方法の本を読むのと同じで、すべてをやろうとしないことです。親野氏の著作同様、ダメな会話の例や親子関係、逆に理想的な例も出てきますが、どれか気に入ったものを一つでも取り入れれば良いのだと思います。


本書で批判されていると思われる、百マス計算や公文式をあわててやめる必要もありませんというのが私の意見です。




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小3までに育てたい算数脳

健康ジャーナル社

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 『小3までに育てたい算数脳』 高濱正伸
健康ジャーナル社:229P:1575円

 

 

 



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
どうしても (haruママ)
2007-01-14 18:47:51
「小3までに~」なんて書いてあると、ついつい「どれどれ~」って気になってしまう私です
私も、子供の頃は自然児?に近かったでした。算数は・・・意外に好きでしたね~(出来は・・・)国語みたいなのよりも、答えが1つしかなく、白黒ハッキリするところは性格にあってるのかも~

興味深い本ですね~、読んでみたいです。(って、言いながら、なかなか出来ずにいるのが正直な所です・・・
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haruママさん (VIVA)
2007-01-15 11:46:36
ええ、良い本だと思いますよ。↑に書いたように、早期教育とは関係ないし、そういう内容なので、データなどでの裏づけもないのですが、なるほどという感じで読めると思います。

それにしても小3までって…、塾に来ている生徒は全部それより年上ですからね。つまり、家庭のしつけとか、生活習慣の話ですね。

haruちゃん、まだ間に合いますね(笑)。
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Unknown (milesta)
2010-03-16 21:52:50
題名を見て「うちの子達にはもう遅い。」と思いましたが、よく読んでみると我が家は理想的な環境だったのですね。現代の子供達なのに、VIVAさん同様

>家の周りは田んぼ、畑と山ばかり、塾はもちろんテレビゲームもなかった

生活でしたから。あっ海と川もありました。で、算数脳にはなっているのでしょうか?それは謎ですね。(笑)

親野智可等先生の書かれるものには共感することが多く、一方で、百マス計算や公文式の学習にはずいぶん助けられましたから、この本を読んだらどう感じるのか興味が沸いてきました。
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milestaさん (VIVA)
2010-03-17 12:02:49
コメントありがとうございます。
暖かいお言葉に感激し、本書を再掲してみました。

ええ、本当に興味深い本です。
またテレビを見て知ったのですが、たくさんの生徒さんを抱える著者ですが、ご自身のお子さんは障害をお持ちで、言葉でのやり取りはできないのですが、子育てを楽しんでおられるようなご夫婦の姿にも心打たれました。
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