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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『日本史の一級史料』 山本博文

2007年02月17日 | 歴史

 

日本史の一級史料.jpg


帯には歴史は1秒で変わると書かれています。

現代人が織田信長の肉声を聞くことも、関ケ原の戦いを目撃することもできません。すべての歴史の知識は残された史料によってのみ、歴史家によって作られたものだということになります。

そして、もし何か新しい史料(資料のうち歴史に関わるもの)が出てきたり、新しい解釈がなされればその一秒の間に書き換えられるというわけです。実際に今でもさまざまな新史料は発見され続けているそうです。

 

本書は導入部分で、宮本武蔵と忠臣蔵を比較します。

NHKの大河ドラマは平成15年は一年間かけて、宮本武蔵を扱いました。吉川英治の長編小説も有名ですし、コミックの『バガボンド』も強い人気を誇っています。

バガボンド.jpg           宮本武蔵.jpg


クライマックスの巌流島の戦いは1612年ということになっていますが、その同じ江戸時代の1703年、こちらも日本人に人気の高い『忠臣蔵』、すなわち、吉良上野介義央の屋敷に討ち入り事件がありました。仇討ちをした大石内蔵助良雄以下47人の赤穂浪士の話ですね。


この二つのどこが対照的かというと、宮本武蔵に関してはほとんど信頼にたる一級史料が残っていないというのです。逆に忠臣蔵に関しては豊富に残っているそうです。こういうやつでしょうね。


古文書1.jpg



ちなみに手許にある日本史用語集で見てみますと、確かに宮本武蔵は名前すら出ておらず、吉川英治が出ていました!そして、忠臣蔵の方では、赤穂事件に関して詳しく解説してあります。

武蔵に関しては、没後一世紀以上たって書かれたものがストーリーの下敷きになっており、身内や弟子たちがおのれの流派の宣伝のために書かれた可能性が高く、筆者によれば、武蔵の兵法の著作といわれる『五輪書』 も、その周辺の史料を探っていくと、弟子による捏造というか宣伝のようなものだとわかるそうです。


以上のようなことを出発点にして、歴史家がどのように史料を扱い、歴史を解釈するのかをわかりやすく説明してくれます。読者がどうやって一級史料を探すのか、教科書や歴史書を鵜呑みにしない歴史観を持つにはどんなことが役立つのかを示します。


目次は

第1章 有名時代劇のもと史料(宮本武蔵の一次史料はたったこれだけ;一次史料が豊富な「忠臣蔵」);

第2章 歴史家は何をどう読む?(東京大学史料編纂所;史料集の編纂とは何をするのか? ほか);

第3章 新しい史料を発掘する(歴史学の基礎を築く「史料採訪」;わたしの「史料採訪」 ほか);

第4章 一級史料の宝庫「島津家文書」を読む(島津家の文書とともに死ぬのなら本望;一次史料だけで「歴史」が書ける ほか);

第5章 「歴史学」への招待(いろいろな一級史料に出会う;データベースから史料を探す ほか)


となっています。大きな字で書かれた新書でわかりやすく、大学の史学科に進みたいと考えている高校生や私のようなまったくの素人には歴史学の導入として良い一冊ではないでしょうか。ただし、古文の勉強はしなおす必要がありそうですが(笑)。


日本史の一級史料

光文社

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バガボンド―原作吉川英治「宮本武蔵」より (1)

講談社

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宮本武蔵 全8冊 吉川英治歴史時代文庫

講談社

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P.S.
実はよくコメントを下さる、あーりーさんは『歴史パロディ』というシリーズの本を書いておられます。今度取り上げますね。さらにラジオに、舞台にと活躍されていらっしゃいます。あーりーさんのブログ、ぜひ訪ねてみて下さい。


   おすすめ歴史小説(あーりーさんのブログ)

[歴史パロディ] 英雄よみがえる!<日本編>

学生社

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また、相互リンク先であり、名作 『浪士石油を掘る』 の著者、真島節朗先生のブログもご覧下さい。歴史の勉強になります。

  『反戦老年委員会』 

 

 

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『日本史の一級史料』 山本博文光文社:224P:735円

 

 


『犬と鬼 知られざる日本の肖像』アレックス・カー

2007年02月17日 | 教養

 

犬と鬼.jpg


受験生にとっては、特に都会の生徒たちは雪に弱いので、暖冬はラッキーだと思っておりましたが、どうも度を越しているようで、東京・神奈川では花粉がすでに飛んでしまっているようです。先日取り上げました、ゴアの『不都合な真実』の記述がますます真実味を帯びて感じられます。


それにしても本当に増えましたね、花粉症の生徒。ひどい人になると薬がなければ集中できない状態になってしまいますから、花粉症の生徒には、こちらの方が雪よりもずっとやっかい。いや生徒だけでなく大人も。私はたまたま大丈夫なのですが、私の家族もそうですし、講師にもたくさんおります。


私が最初に、花粉症は日本人の“体質” の問題ではなく、“人災”、つまり官僚の誤った政策の結果であると知ったのは、ベンジャミンフルフォードの『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』 を読んだ時だったと思います。

林野庁だか国土交通省だかの政策で次々に杉を植え続けたが、結局輸入杉を使うために伐採しないまま放置した結果、こんなに多くの国民が花粉症に苦しんでいる。しかしマスコミは指摘しないし、国民は怒らないし、役人は責任を取らないまま、依然として杉を植え続けている、というような指摘だったと思います。

ゆとり教育も同様ですが、何であれ、いったん実施した政策を過ちだったと認めて転換することは官僚は絶対にいやなんですね。さっさと杉を切り倒せば、あるいは他の木に代えれば良いだけだと思うのですが…。


本書もそれと似た観点から日本を批判します。カー氏は父親が海軍の弁護士で、12歳の時に来日し、その後アメリカの大学で日本学を専攻。再び来日して30年以上日本に住んでいるようです。

美しき日本の残像』 という本を日本語で書き、ある文学賞を受賞するほどの日本通ですが、なぜこんな国になってしまったのかと強い怒りと悲しみを持って書いています。

もとは外国人向けに英文で書かれた 『Dogs and Demons』、日本の現状分析の本で、それを翻訳したのが本書です。

外国には「ジャパノロジスト」と呼ばれる日本大好き外国人記者が相当数いるらしいのです。それらの人は自発的に、また中にはいろいろな日系の組織などに雇われて記事を書いているのですが、日本人から見ても、あるいは筆者のような、日本は好きだが非常に問題ありという意見を持つ人から見ても誤解を招くだけとしか思えない記述がたくさんあるようです。


日本の文化を知ったつもりで書いているのですが、何を見てもほめてしまうのだそうです。例えば何の役にも立たないような美術館やダムなどです。

本当の日本の姿を外国人に知ってもらうのが英文出版の意義で、同時に日本人に問題の本質を提示したいというのが日本語版の意義です。日本人にとってはかなり耳の痛い話が続きます。

痛烈な批判が含まれているためか、本書に対する書評は非常に厳しいものも多いですね。“日本に二度と来て欲しくない” とか “外国人の意見だとすぐにありがたがって聞く日本人がおかしい” などなど。


目次を紹介しておきます。

国土―土建国家
治山・治水―災害列島
環境―ステロイド漬けの開発
バブル―よき日々の追憶
情報―現実の異なる見方
官僚制―特別扱い
モニュメント―大根空港
古都―京都と観光業
新しい都市―電線と屋上看板
鬼―モニュメントの哲学
「マンガ」と「巨大」―モニュメントの美学
総決算の日―借金
国の富―お金の法則
教育―規則に従う
教育のつけ―生け花と映画
国際化―亡命者と在日外国人
革命は可能か―ゆでガエル


処方箋を示してはいますが、それがうまくいく可能性はわずかしか残されていないという意見です。自然破壊だけでなく、京都など景観すなわち伝統の破壊、何も言わない国民の幼稚性、官僚の傲慢さ、政治の無力さなどなどを指摘しています。


最後の “ゆでガエル” ゴアの本でご紹介した理論ですね。確かにこんなもの海外で出されたら日本の恥だと憤慨する気持ちもわからなくはないですね。でもそんなカー氏も、35年住んできた日本を離れ、とうとうバンコクへ行ってしまったと聞くと、ちょっとさびしくないですか(笑)。


カー氏の本書に関するインタビューがネットにありますので、よろしければご覧下さい。
 
 → 『アレックス・カー:インタビュー(月刊プレイボーイ)』
 

挑発的ではないのですが、読者を怒らせるほど、刺激的な本ですから、興味のある方はそれを承知の上でどうぞ。

 

 

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犬と鬼―知られざる日本の肖像

講談社

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『灘高キムタツの頑張ってるから悩むねん。』 木村達哉

2007年02月17日 | エッセイ

 

 

 

頑張ってるから悩むねん。.gif


やっと発売になりました。


日本有数の進学校、灘高。その高3生の英語担当教師、キムタツこと、木村達哉先生のエッセイです。昨日、アマゾンから届き、即、一気読みでした。


私は、つい先日の記事で、今年のセンター試験前、受験生に贈る最後の一冊として、バートランド・ラッセルの 『幸福論』 を選びました。長年の私の愛読書で、ものすごいパワーと知恵にあふれた珠玉の名作だと思ってそうしましたが、本書を読んで、まず最初に思い浮かんだ感想が、

 
“あっ、これは、キムタツの幸福論 だ” というものです。



“夢ってなんだろう?”

“どうして前向きに生きることができないのか?”

“自分は変えられるのか?本当の自分って?”

“教育とは?”

“お金とか家族の意味は?”




こういう、根本的なことが気になってしまう、感性の鋭い若い人に読んでもらいたい一冊です。若くなくても、訳知り顔にものを言う、私のような大人たち(笑)、そういう人にも大変刺激的でした。(生徒が親に薦めるのに良いかも!)


さて、拙ブログを継続的にご覧頂いている方は、私がキムタツ先生とお付き合いがあることはご存知だと思います。そのきっかけは、私がキムタツ先生の最初のご著書 『センター試験英語リスニング合格の法則』 をどちらかと言うと、やや“批判的”にレビューしてしまったことです。それこそ訳知り顔に…。

 
それに対していただいた、先生じきじきの真摯なコメントに驚きました。どうして拙文が先生の目にとまったのか、その当時、まだ、ブログランキングにも参加していませんし、ブログをはじめた当初で、きっと一日のアクセスもわずか50くらいの時の記事ですから、偶然と言う他ありません。



 → 『センター試験英語リスニング合格の法則



まぁ仮に、こんな記事を見つけたとしても、無視して何の差支えもないのですが…。


最近でこそ、拙ブログでとりあげたご著者自身がメールを下さることが結構あるのですが、私が批判的に書いたものに対しては、こう言っては申し訳ないのですが、本や英語の不備に対して、読者、多くは受験生には関係のない、言い訳が多いのです。


やれ、忙しかっただの、出版社の不手際だの…と。その点でも、キムタツ先生のコメントは際立っていました。取り上げたことに対する感謝の意が表明されているのですから。


その後、続けて、


センター試験英語リスニング合格の法則(実践編)

東大英語リスニング

東大英語リーディング

東大英語ライティング&グラマー



を次々と出され、それぞれにレビューを書きましたが、これまた驚くことに、普通、“売れた”後に、出されるものは大抵、派手な宣伝とは裏腹に、手抜きが目立ったり、繰り返しの主張や英文が多くなるものですが、キムタツ先生の場合は逆。どんどん内容が濃くなっている印象です。


特に近著のライティング&グラマーは出色で、東大受験生だけでなく、多くの生徒に使ってもらいたい一冊です。いや、ほんとに。お世辞でもなんでもなく。ブログから一円の利益もありませんので(笑)。



また、こうしたネット上のやり取りの中で、“今度ぜひ一杯やりましょう” というのはどこでもあいさつ代わりですが、キムタツ先生は、実際に忙しい時期にもかかわらず、東大特講の前日に上京された折、私にわざわざ電話をいただき、実現しました。



→ 『Enjoyed ourselves



本書で繰り返し強調されている、“アンテナをはり、行動する” というのを確かに実行されていますね。ただ、アンテナの感度が良すぎて、私のようなものまで、そのアンテナに引っかかるので、どうかとも思いますが…(笑)。


また、思いがけず、灘高の未履修問題の発覚したその当日、私は、木村先生が出版物の打ち合わせ中(本書かな?) にもかかわらず、 “先生のフェアプレー精神を信じたい。すぐに、ブログで事実を公表して、お詫びのメッセージを出していただきたい”とメールをし、数回やりとりをさせていただきました。  


下手な対処をすれば、キムタツ先生のブログが炎上するリスクもありますが、先生は翌日すぐ、履修漏れの事実の公表と、自らの認識不足に関し、真摯なお詫びの記事をブログに出して下さいました。



→ 『履修漏れに関して(お詫び)』(キムタツのリスニング日記)



受験業界や教員の世界に無縁の方にとっては、単なるお詫び記事ですが、私にとっては、信じがたいほど、けた外れに勇気ある行動です。長くなるのでやめますが…。キムタツは本物だと、私が一番感動した記事なんです。


週刊誌も新聞、テレビ局も、さらに、きっこのブログまでも、遠慮なく、灘高や、その教師を批判しますが、まったくの事実誤認があります、きっと今だに。そのあたりは当教室、伊藤先生がきちんとした記事を書いてくれました。




 伊藤先生のブログ→『代々木の個別学習塾講師が想う、あれこれ




渋谷で二度目にお会いした時、私がその不公平に憤慨しながら、そのことについて話し合いました。先生は身に降りかかった批判や不利益を、まるで次のことに向けたエネルギーに換えてしまうかのようなポジティブな態度でしたが、その真意、考え方が本書を読んで理解できました。


人間、木村達哉がこれまで経験した多くの挫折。病気や受験での失敗、さらに父親の事業の失敗など…、筆舌に尽くしがたい苦労を経て、また読書を通じて、身に付けた人生観なんですね。


人生、泣き笑い、演歌じゃないけど(こんなこと書くと、叱られる!)、本当にそういう一冊で、私も読んで泣き、笑いましたね。



この世に生まれた以上、がんばらなあかん、生徒たちの役に立ちたい





それを再認識させられた一冊です。受験に関わるすべての人に読んでもらいたいなぁと思います。






P.S. 本書の印税は大部分ユニセフに寄付されるそうですよ。また、たまたま昨日は先生の43回目の誕生日だそうです。おめでとうございます。ますますのご活躍、祈念しております。
 



http://tokkun.net/jump.htm 

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『灘高キムタツの頑張ってるから悩むねん。』 木村達哉
ベネッセコーポレーション:208P:1260円





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