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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『ダナエ』 藤原伊織

2007年02月28日 | 小説


ダナエ.jpg


『蚊トンボ白鬚の冒険』という藤原氏の著作は、600ページ近くある大作でしたが、氏の代表作『テロリストのパラソル』などに比べると、あまり評判は良くないようですね。ただ、私にとっては、その作品はファンタジーで、ミステリープラス、ハードボイルドの印象深い作品で充分楽しめた一冊でした。


本書はそれとは対照的に3作品あわせてわずか200ページ。表題作の『ダナエ』の他に、『まぼろしの虹』と『水母(くらげ)』 という作品がおさめられています。

ダナエというのはギリシャ神話に出てくる女性ですが、ここでは、それを17世紀のオランダ人画家レンブラントが書いた絵画の名前のことです。↓がその作品です。

ダナエ レンブラント.jpg
(クリックで拡大します)


この絵、実は1985年にエルミタージュ美術館サンクト・ペテルブルク)で硫酸がかけられるという事件が起こりました。修復不可能なほどのダメージを負ってしまうのですが、その動機や事件の顛末などは明らかになっていないようです。


その事件をモチーフに書かれています。主人公の画家の代表作が、ある画廊で開催していた個展の最中に、ある者によって切り刻まれ、硫酸をかけられるという事件が起こります。とっさにダナエのことを想起し、犯人をさぐります。事件直後、犯人からの電話では、これはまだ予行演習だと…。

エルミタージュで起こった事件と、ギリシャ神話を組み合わせたミステリーです。大変興味深い進行で、予想外のラストまで一気に読めます。もっと読みたい、という気になりました。もっと長くして欲しいんです。


複雑な人間関係と興味深いエピソード、そこにギリシャ神話など、内容がたくさん詰まったスケールの大きな話でしたから、もう少しゆっくり読みたかった、絶対超大作になるのに、なんで短くしちゃったの?というのが正直な感想です。

実は2005年、藤原氏は食道ガンであることを公表しています。これまでのような大作を上梓する意欲が残されているのか、ちょっと心配になってしまいました。まだまだ読みたい作家です。病状が改善されることを願うばかりです。


三つめの『水母(くらげ)』。これがおもしろい。50ページの短編ですが、おもしろいストーリーと個性あふれる登場人物が、ぴたっと納まっている秀作だと思います。


すべての作品、いずれも過去、現在に人生の悲哀を持った青年、および中年男性が主人公です。それぞれが心の再生とでもいうのでしょうか、浄化されていくさまが描かれています。



P.S. で、中年男性の悲哀といえば…、“ふるさん” と私、よく話が合うんです(笑)。本書はふるさんが紹介してくれました。すばらしいレビューがありますので、ご覧になって下さい。 

             ⇒ ふるさんのブログ(ダナエ書評)

 

ダナエ

文藝春秋

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『ダナエ』藤原伊織
文藝春秋:217P:1300円

 

 


『アイドル政治家症候群 - 慎太郎、真紀子、康夫、純一郎に惹かれる心理』矢幡洋

2007年02月28日 | 政治・経済・外交

 

アイドル政。家症候群.jpg


今度の東京都知事選、何と朝日新聞が社説まで使って、民主党の菅直人氏にラブコール、立候補を促したそうですが、どうもご本人は出たくないようですね。出馬してくれれば生徒たちの政治に対する関心も一気に高まるでしょうに。

NEWS23の司会者、筑紫哲也氏も民主党に出馬を打診されたと報道されていましたが、こちらも難しそう。TBSなんかさっさとやめて、そのまんま東の決断力を見習って、あとは、みのもんたに任せて出ればいいのに(笑)。


他にも名前が出ているのが、田中康夫海江田万里小宮山洋子蓮舫と、みんな政治以外で活躍した有名人ばかり。やはり現職の石原都知事に勝つには、相当な知名度と、プラス、アイドル性のようなものが必要なんでしょう。


出馬表明した建築家の黒川紀章さんの決意はあっぱれ、奥さんは若尾文子さん。私は著作も読んで共感を覚えましたし、大物であることは確かですが、どうなんでしょう、黒川さんをもってしても、まだインパクトが少し弱いような気がしますが…。


本書は日本中をわかせたアイドル(偶像)政治家として石原慎太郎、田中真紀子、田中康夫、小泉純一郎、プラス鈴木宗男を取り上げて、それぞれ心理学の側面から各氏の行動や性格を分析します。


例えば、田中康夫は “演技性パーソナリティー” といって、簡単に言えば「目立ちたい」人。田中真紀子はちょっと難しくて、“否定性パーソナリティー” “攻撃的パーソナリティー” “すね者パーソナリティー” がからむそうです。不機嫌で扱いづらい人。

石原慎太郎は“反社会性パーソナリティー” “加虐性パーソナリティー” で、小泉元首相は“中心気質” というように分類しています。


以前ご紹介した大御所、大嶽秀夫氏の『日本型ポピュリズム』は、政治学者だけあって、やや専門的な一冊でしたが、こちらは非常に分かりやすい内容です。

また元衆議院議員の水島広子氏が書いた『国会議員を精神分析する』では、石原慎太郎や田中真紀子は“自己愛性パーソナリティー”といって、ちょっとした人格障害に分類していましたが、政治色が出ていたので、それより信頼が置ける一冊ではないかと…(笑)。


石原氏らを、ある心理学の世界的権威がまとめた分類にはめ込んでいるだけですが、心理学というものは実社会でも役立つなぁと感じます。このアプローチによって彼らの一見不可解な行動の意味が分かりますから。

難しい用語はなく、しろうとでも政治家の行動パターンをマスコミで作り上げられる虚像に左右されることなく、分析することを可能にしてくれています。政治家を批判するのではなく、あくまで有権者が彼らのことを誤解しないようにという意図で書かれていると思います。


現代の国政選挙では、大勢の人前で、感情を込めてわめいたり、どなったり、土下座したりといろいろ大変です。目立たなければ話になりませんから、確かに普通の神経の人では政治家は務まらないでしょう。

じゃあどういう人に託すのか、政策も重要でしょうが、性格も見極めないとだまされちゃいますね。

 

アイドル政治家症候群―慎太郎、真紀子、康夫、純一郎に惹かれる心理

中央公論新社

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 『アイドル政治家症候群 - 慎太郎、真紀子、康夫、純一郎に惹かれる心理』矢幡洋
中央公論新社:209P:756円