ワールドカップ初戦、オーストラリアはかなり強いとは聞いていましたが、これほどとは…。これ以上ないほど厳しい結果になって、泣きそうになりましたよ。
オーストラリアといえば、子どもなら、“カンガルー”、や“コアラ”。大人なら、“リゾート地”とか“オペラハウス”などが一般的で、いずれにしろのんびりしたイメージです。
オーストラリアチームの選手は、日本戦の前、ゴルフをしていましたが、私はオーストラリア人から、直接、『この国では、ゴルフは貧乏人がやるもの。金持ちはクルージングをする』 と聞きました。さらに、サッカーに関して、『イギリス嫌いだからサッカーは、はやらない』とも。あれ?“貧乏人のはやらないスポーツ”にしては強すぎます(笑)。
実は、サッカーに現れているかもしれませんが、世間のおだやかなイメージとは異なり、オーストラリアはかなりワイルドな歴史の国です。オーストラリアへの最初の移民はロンドンの囚人達だったと別の本で読んだことがあります。
本書の主人公、ネッドケリーはオーストラリアの有名人で、開拓時代に、圧政に抵抗したヒーローとも呼べるのですが、実は、皆から恐れられた非情な殺人鬼ともいえる人物です。
1880年頃、(日本で明治政府が国会開設の準備を進めているころ)ネッドケリーは、警察と凄まじい銃撃戦のうえ、最後は虫けらのように死んでしまうのですが、彼は、まだ見ぬ自分の娘に語る形で、自分の人生をつぶさに記録していました。
それが娘に渡り、そして新聞などに載ることで、警察や裁判所の不正を世に示したいと願ってのことでした。この手書きの原稿は今も、メルボルン公立図書館に歴史資料として保管されているそうです。
ケリーが便箋などに書いた文章は、時に草むらや、隠れ家で書かれたもので、ひどく痛んでおり、その上、ろくに学校も出ていないため文法もめちゃくちゃだそうですが、多くの人の心を打つものだったようです。
本書はその膨大な資料をもとに、オーストラリアの歴史の中で生まれた、ケリー一味の真実を紹介した本で、英国のブッカー賞を受賞しています。
開拓時代の想像を絶する厳しい生活、人種差別、貧困にあえぐ中、幼いケリーが家族を支えようと必死になっているところから始まります。自分の力ではどうにもならないことが次々と起こり、ある時は警察に仕返しをするため、ある時は家族を養うために犯罪に手を染めます。
そして、ついに、最愛の母を無実の罪で投獄されて、警察との命がけの対決と真実の公表を決意します。500ページを超える作品ですが、飽きることなく読みふけりました。
当然ですが、それぞれの国にそれぞれの歴史、その国を理解しようとすれば、歴史の勉強は不可欠です。次のクロアチアはさらに複雑ですね。
http://tokkun.net/jump.htm
ケリー・ギャングの真実の歴史早川書房詳 細 |
『ケリーギャングの真実の歴史』 ピーター・ケアリー オーストラリア ブッカー賞