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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『ぼくの翻訳人生』 工藤幸雄

2006年06月04日 | 英語関連書籍

語学に通じるには人生は短すぎる、としみじみ語っている筆者は大正生まれで、今年80歳。ポーランド語翻訳の第一人者ですが、フランス語、ロシア語、英語などでも翻訳をしているそうです。

とにかく他人の訳が気になってしまい、翻訳物は読めないとまで語っています。確かに私も全くレベルは低いのですが、英語の『 I 』を、あえて『おいら』とか『うち』 とか『あっし』 とか『自分』 などと訳してあるだけで、いったん読むのを中断して、訳者あとがきや、翻訳者の経歴を見たりすることがあります。

本書は体系的な翻訳論ではなく、いわば筆者の自分史で、愚痴を含めて、思うままに“翻訳人生”を語ります。満州での外国語との出会いや、占領下での検閲の思い出、A級戦犯の裁判や記者時代のエピソードも語られます。出版社への小言や若者の語学力に関する苦言もあって、おもしろく読めました。

私の知人にも、塾の英語講師にも、“翻訳” で食っていきたいという人が何人かいますが、そういう人が読むとがっかりするかも知れません。全編通じて、『大変だからやめときなさい』と諭されているような気がするからです。その前に日本語を鍛えなさいと…。

やはり、英語に限らず、外国語に精通しているといえるような人ほど、日本語の重要性を強調しますね。受験参考書などには、“○○で完成!”とよく書いてありますが、範囲の決まった定期テストならともかく、どこまでやっても語学は極められない、というのが真理なのでしょうか。

翻訳家になりたい人だけではなく、翻訳家とはどういう人かということに興味がある方にお薦めです。

http://tokkun.net/jump.htm
『ぼくの翻訳人生』工藤幸雄 中央公論社:267P:861円
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ぼくの翻訳人生

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