玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

11月24日の「木の実・草の実・たねしらべ」

2018-11-24 21:33:27 | 観察会


子供の作品 更新中
子供の感想
保護者の感想
スタッフの感想 更新中

 11月24日に「木の実・草の実・たねしらべ」と題する子供観察会をしました。コンビニに9時半に集合なので、スタッフは9時過ぎから集まりました。来た人から名前を確認、胸に荷造りテープで名前をつけてもらいました。
 最初に簡単に挨拶をして、早速玉川上水に行き、すぐのところにある「水車林」という林まで行ってから説明を始めました。玉川上水は一部の木々が色づいて秋らしい景色になっていました。
 子供達に自己紹介をしてもらいましたが、知らない人の前なので恥ずかしそうに小さい声の子が何人かいました。この林にはエノキが多いので、挨拶もそこそこで、説明を始めました。



「先生よりみんなの方が目がいいはずだから、よく見てね。木の葉のところに黒い点々があるでしょう。あれはエノキの実です。あれが下に落ちているはずだから、探して見て」





 子供達は枯葉の中をのぞいて
「あった」
と嬉しそうに報告します。ジップ袋を配って入れてもらいました。





「あのね、これは食べられるんだよ。みんなが食べるお菓子のように甘くはないけど、ちょっと甘い味がするんだ。ちょっとかじって見て」
「えっ、そうなの」
と大人からも声が上がりました。
「あ、ほんとだ、ちょっと甘い」
という子もいましたが、地面に落ちていたものを口にするのは抵抗があるような子もいたようです。

「みんなはどのくらい色の名前を知っているかなあ。これは?」と言ってマサキを示すと
「みどり」
「そうだね、じゃあこれは?」
とエノキの枯葉を示すと
「茶色」
「そうか、茶色は知っているのだ、じゃあこれは?」
とウワミズザクラがあったので示すと
「黄色」
と大体の色は知っているようでした。
「林を見ると色々な色があるね。夏は緑だったけど、秋になると黄色や赤になる葉っぱがあるし、木の実も初めは緑だけど、赤とか紫になるものがあるんだよ」

 それから玉川上水に戻ってもらいましたが、林に入るところにある小さな橋のたもとにクサギがなっていたので説明しました。



「これはクサギと言って独特の匂いがする木で、青い実がなっています。萼が赤いのでとても目立ちます」


クサギ


枝を折って葉っぱの匂いを嗅いでもらうと
「あ、ほんとだ臭い」
「匂いがするけど、別に臭くない」



と色々な反応がありました。

玉川上水沿いは木々が色づき始めていました。



道は、このところ乾燥したせいで砂埃がササなどにかぶってほこりっぽい感じでした。しばらく行きとムラサキシキブがありました。今はこれが一番多いようでした。ピンクがかった紫でとてもきれいでした。子供にとれるように幹を曲げ、自分でとらせました。そしてポリ袋に入れると、色とりどりになって楽しげでした。








 そのあとは創価高校の脇で、木が密生しているので、果実はあまりありませんでした。ところどころにヤマモミジが紅葉しているのが見られました。







注目すべきことに、コナラの直径30cmくらいのが幹でボキリと折れていました。



「9月30日の夜中から10月1日の朝にかけて台風24号が来てすごい風が吹きました。八王子では風速40数メートルにもなったそうです。それでこういう具合に木が倒れたり、折れたりしました。私たちは玉川上水で植物を調べていますが、30キロに101本の木が倒れていました。この木を折ろうとしても、何十人がかかっても絶対折れません。それが風で折れたんだから、どれだけ強い風が吹いたんだろうと思います。このフェンスも鉄筋入りですが、折れています」
と大人に話をしました。
 その先でツルウメモドキがあったので紹介しました。
「黄色の果皮の中に赤い種子が入っています。普通は果実に果肉があって、中に硬い種子が入っていますが、これは果皮があって果肉がなく、種子が果実のように赤い色をつけて果実の役目をしている、ちょっと変わった果実です。この黄色と赤のコントラストが鮮やかなので生花などに使われます。花は小さくて緑色で気づく人はいませんが、秋になって気づきます」







「この先にシロダモ があります。玉川上水には割合よくあります。赤い大きな実を塊でつけます」



そこに行くと、地面にチゴユリがたくさんあり、よく探すと2つだけ実がありました。



 クヌギのドングリがあったので、
「ここまでは降りてきていいから入ってドングリを拾ってみよう」



と言ったら何人かの子が嬉しそうに拾っていました。



 こういう調子で、ノイバラ、ナンテンなどもとってもらい、袋は賑やかになってきました。


ノイバラ



 ここで上水公園が近くなったので、木の実集めは終わりにして、そこにあったイノコズチをとり、保護者の一人の服にイノコズチの穂をつけて引くと果実がつきました。別の子供にも同じようにしてみました。







「これは果実の一部に曲がったトゲみたいなものがついていて、木綿や毛糸によくつきます。こうして動物の体について運んでもらいます。今ファーブル(実体顕微鏡)とルーペを出すから、よく見てね」
とベンチに置いて見てもらいました。




 ここで玉川上水をバックにして記念撮影をしました。



 それから少し歩いて武蔵野美術大学に行きました。2号館にツタが這っているので、その壁に行って子供に採集させてから、食べてもらいました。



美味しいというものではありませんが、ブドウの仲間なので十分食べられるものです。





 2階に上がると、一足先にきていた関野先生が待っていました。教室に入って前の机に豊口さんと私が事前に集めていた果実を並べ、子供達には前に、保護者には後ろに座ってもらいました。
「今日は色々な木の実を集めました。その中から好きなのを3つ選んでね。そしてそのうち2つをスケッチしてもらいます。スケッチするときは、こうしてください」
と言って、黒板にスケッチブックの枠を書いて
「本物はこんなに小さいけど、絵ではそれを紙の半分くらいの大きさに描いてね」
 実は粘土細工をして、そのあとでスケッチと考えていたのですが、1時間ほどしかなかったので、粘土は諦めることにしました。




 子供達が描き始めてから、果実の名前を教えて回りました。子供によって速い、遅いがあるので、ある程度できたところで、説明をしました。
「次に、好きな実を1つ選んで、中にタネが何個入っているか調べてみて」
と言って果実の中の種子数を調べてもらいました。そして紙に果実のおよその形、色を描いて、中に種子を描きました。
 そうして、ノイバラ、ムラサキシキブ、クスノキ、ゴンズイ、ヤブコウジが並びました。



「こういうふうに、中にいろんな大きさのタネが1個とか9個とかいろいろ入っているね。それに比べると木の実は大きさもそれほど違わないね」
 それから
「今度はね、自分の好きな果実を選んで、それが赤なら、ここに色々な色が並んでいるので、その中で赤の上にマグネットをつけてね」
と色チャートを見せました。
「森の中にあった色を思い出すと、緑とか黄色とか茶色などがあったし、赤い実もあったね。ここにはそういう色が並べてあります。緑はこの辺、赤はこの辺にあるから、自分が選んだ実の色のところにマグネットをつけてね」
子供達は教卓に集まってきてマグネットをもらってつけて行きました。そうするとほとんどが赤、紫が1つ、緑が1つになりました。





「この緑はアオキの若い実で、これから熟すと赤くなるので、最後はこっちに行きます」と赤の領域を示しました。
「では、なぜ赤い実が多いんだろう?」
と水を向けましたが、これには反応がありませんでした。こういう質問のされ方はあまり経験がないのか、それとも知らない人の前で手をあげるのが恥ずかしかったのかはわかりません。
「それはね、緑の林の中では緑の身は目立たないけど、赤い実ならよく目立つから、鳥が見つけやすいんだ。宣伝をしているということだね」
と説明しましたが、あまり理解していないようで、保護者の方が頷いていました。小学生にはピンとこないようでした。

 いよいよあまり時間が残っていないようだったので、次の内容を説明しました。木から離れるとクルクル回って風に乗って飛ぶタイプの果実はマツとかカエデなどがありますが、それらは小さいので、アオギリを用意しました。
 アオギリは長さが10cmほどもある大きな果実で、靴べらみたいですが、そのくぼみをもっと強調したようになっていて、そこに数個の種子がついています。中華料理のレンゲといったほうがいいかもしれません。種子は外れやすく、拾ったときに1個のもの、全くないものもあります。右と左が少しずれてついています。果実部分はとても軽いので、空気を孕んでゆっくりと落ちようとします。種子が左右でずれているために、落ちるときに左右にズレが生じ、クルクルと回転して落ちるようになっています。果実の重さと果実の抵抗がうまくバランスが取れると見事な回転が生まれます。


アオギリの果実

教卓に登って落とすとあまりクルクルとは回りませんでしたが、回転するようすは見えました。



「ではこれを中庭でやって見るので、みんな外に出て」
と言いました。子供には1階に降りてもらい、私が2階の廊下から落とすという作戦です。棚橋さんにも降りてもらって「5、4、3、2、1」とカウントダウンしてもらい、ゼロになったら手から離し、そこから「1、2、3」とカウントするようお願いしました。



最初にボールを落とすと、1秒ちょっとで地面につきそうでしたが、男の子が取ろうとして集まるので正確にはわかりませんでした。





それを3回繰り返して大体1秒ちょっとということを確認してから、いよいよアオギリを落とすことにしまいた。子供達は大声で「5、4、3・・・」と「合唱」します。アオギリの果実を5個ほど持って話すとスルスルと落ちるものもありましたが、うまく回転するものもあり、大人からも歓声が上がりました。一番遅いものは8秒ほどかけて落ちました。これを2回やり、やはり8秒ほどでした。











「これをやりたい子?」
というと子供たちが走って階段を駆け上ってきました。







そして2回やって、どれも8秒ほどだということを確認しました。つまりアオギリはボールに比べて8倍ほども滞空時間を長くしているということです。

 教室に戻ってまとめをしました。
「木にはいろいろな実がなります。でも木は根があって動けません。自分の子供であるタネを飛ばすために、赤い実は<おいしい実ですよ>と宣伝して鳥に食べてもらって鳥が遠くに飛んで糞をして運びます。それから動物の体について運んでもらう実もあります。あるいはアオギリのように、風で運ばれるものもあります。こうしてタネを遠くに運ぶような工夫をしているんだね」



子供がどこまで理解したかはわかりません。でも、植物がいろいろな工夫をして暮らしているということを何となく感じてくれればいいと思います。

「今日はねえ、時間がなくて粘土ができなかったけど、ほんとは粘土をやろうと思っていました。それで粘土でタヌキとかクマとかを5つ作って持ってきました。



これをくじ引きでもらう人を決めます。この緑色の棒(と言ってもネジリッコという園芸用の針金にコーティングしたもの)の下に赤い印がついていたら当たり、なければ外れです。赤いのが5本だけあります」
これは嶋本さんにやってもらいました。幼稚園の先生をしているので、子供の扱いがとても上手で、楽しそうにやっていました。









実は本数と人数が合わなくてあたりが2本残ってしまって面倒なことになったのですが、それも嶋本さんがじゃんけんで解決してくれました。
 最後に「認定証」を渡しました。照れ臭そうな嬉しそうな顔をしていました。それから使わなかった粘土を配り、感想文を書いてもらって終わりにしました。





 9時半から2時間半あまり、小さい子供なのに集中を切らさないで楽しみながら勉強してくれたと思います。今回の企画では果実の観察と制作が溶け合ったようなものにしたいと考えていましたが、結果としてどういうものになったかというと、自然を知ることを遊びながら体験させることがうまくできたように思います。ある保護者の方の感想にあった「学校に行きたがりませんが、今日は目を輝かせて参加していて感動しました」という言葉が、そのことを象徴しているように感じました。

 順序は逆ですが、今回のためにチラシを作りましたが、これには棚橋早苗さんがレイアウトなどでご協力いただきました。




 豊口信之さんはこのチラシを公民館などに配布してくださり、当日のために果実を採集して下さいました。武蔵美大の使用に際しては関野吉晴先生にお骨折りいただきました。このほか、リー智子さん、足達千恵子さん、中塚 智恵美さん、平沼みなみさん、嶋本裕子さんにはスタッフとして支えていただきました。写真はいつものように豊口さんと棚橋さんが撮影してくださいました。ありがとうございました。
 子供達が目を輝かせ、嬉しそうな顔をしていたのを思い返すと、心がホワッと暖かくなります。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スケッチ | トップ | 津田塾大のタヌキのフン内容... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

観察会」カテゴリの最新記事