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源氏物語「梅枝」の写本に、原作に近い別本を発見 勝海舟の蔵書印も

2008年10月29日 | Weblog
 甲南女子大学(神戸市)の図書館で保存されている源氏物語第32巻「梅枝(うめがえ)」の写本が、鎌倉時代中期に書かれた「別本」と呼ばれるものだったことが29日、同大文学部の米田明美教授(日本文学)の調査で分かった。現存する「梅枝」の写本では「保坂本」と呼ばれるものと並び最古級という。
 源氏物語の代表的な写本の藤原定家編纂「青表紙本」とは異なる独自の文があり、「光源氏」と「紫の上」の会話の中などにこれまでにない描写が多数あり、米田教授は「紫式部が書いた原作に近い可能性もある」としている。
 米田教授は「これだけ古い別本が出てくることは、今後ほとんどないでしょう」と話す。同大が1973年に京都の古書店で購入した「梅枝の巻」の写本は、主流である「河内本」とされていたため、長年図書館の保管庫に保存され顧みられることはなかった。が、千年紀を機に再読していた米田教授はこれまでの写本と異なる記述があることに気づいた。
 光源氏が紫の上を「あなたの書は素晴らしい」とほめる場面。他の写本ではこれに対する紫の上のせりふはないが、この写本では「いたうなすかし給そ(ご冗談をおっしゃいますな)」と答えていた。
 これまで寡黙とされていた紫の上と、光源氏との仲むつまじさが伝わってくる記述で、米田教授は「まさか別本では」と胸が高鳴ったという。
 写本には「勝安芳」の蔵書印があり、江戸時代末期から明治にかけて活躍した勝海舟が、元号が明治に変わってから名乗っていた名前とみられ、軍艦奉行を罷免され、閉居していたときに読んでいたと推測される。米田教授は「『女が読むもの』と思われがちな源氏物語を、軍事の専門家が読んでいた。維新後、気持ちに余裕ができた海舟が恋物語を手に取ったのかななどと思いをめぐらせるだけでも楽しい」と話す。
 勝の半生を描いた「それからの海舟」の著者である作家、半藤一利さんは「面白い。でも勝は女性的なのが嫌いだから、本当に読めたのかなあ」と笑いながら話した。
 関西大の田中登教授(日本文学)に鑑定を依頼したところ、線が太く力強い書風や「斐紙(ひし)」と呼ばれる紙に書かれているなどのことから現存する「梅枝」の巻の写本では最も古い年代で、鎌倉時代中期の1240-80年ごろに書き写されたものと鑑定した。 
 54巻から成る源氏物語は作者紫式部が書いた原本はなく、書き写しで伝えられてきた。鎌倉時代初期に藤原定家が書写した青表紙本で現存するのは4巻だけとされ、梅枝は含まれていない。
[参考:10/29時事通信、共同通信、毎日新聞、産経新聞、読売新聞]
源氏物語の最古級写本 「梅枝」の巻、鎌倉中期 (共同通信) - goo ニュース
源氏物語に新描写の別本=鎌倉中期の写本、原作に近い?第32巻、甲南女子大所蔵(時事通信) - goo ニュース

[参考:2008.7.22前出]


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