歴歩

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相模原市・天応院 北条氏照息女・貞心尼中興 青山忠俊公の墓

2011年03月25日 | Weblog
曹洞宗 龍淵山 天応院 (相模原市南区下溝780-1) 石雲院(静岡県榛原町)の末寺


     西門(左)と山門(右)

 相模原線の原当麻(はらたいま)駅で下車し、東南400mの距離に天応院がある。山門は南にあるが、駅から近い西門から入ると境内に説明板があり、
 「この寺は山号を『龍淵山(りゅうえんざん)』といい、室町時代に季雲(きうん)禅師が開山したといわれ、その後、この地方を所領していた北条氏照の娘貞心(ていしん)尼によって中興開基されたと伝えられています。慶安3年(1650)には寺領として九石七斗の朱印を受けています。墓地内にはこの貞心尼の墓といわれる石塔と、徳川時代にこの土地の領主だった青山忠俊の墓があります。また、武士に切られたと伝えられるお化け石塔もあります。   相模原市 相模原市観光協会」
 と書かれている。


天応院を訪れた当時(2010.11.11)は、本堂、庫裡などを新しくしていた。

1. 栃木県佐野から相模国溝郷へ、創建から中興
 寺伝によると、下野国佐野にあった天応院(天応元年(781)の創建と伝わる)が戦国時代に焼失したため、当時佐野城代であった山中氏を開基として、天叟順孝(てんそうじゅんこう、?-1532)の師、季雲永岳(きうんえいがく、1466?-1526、注1)に請うて、明応4年(1495)に当地に中興開山したと伝えられる。

(注1) 季雲永岳は武州の出身で、20才の時に出家して石雲院(本寺)で修行して印可を得、その開山・崇芝性岱(そうししょうたい)禅師の7哲の一人といわれる。39才の頃、今川氏の援助をうけて、最初の寺院、円成寺を開いた。
 芝派7哲季雲永嶽、龍門山石雲院(榛原町坂口)に4住。[『龍門山石雲院史』] とある。
 当寺の本寺・龍門山石雲院(静岡県牧之原市)は、康正元年(1455年)に崇芝性岱山禅師を開基として、勝間田氏の菩提寺として開山された。 ただし、平安時代から山岳寺院としてあったとみられ、治承3年(1179)の創建とも伝えられている。

2. 2度目の中興、貞心尼
 5世太陰岱樹(だいいんたいじゅ、?-1577)の時に、北条氏照(油井および大石源三、1540-1590)の娘・貞心尼(?-1588、注2)が寺社領(注3)を寄進し、中興開基として再興したといわれる。貞心尼は下溝「堀の内」に居を構え、その墓が当寺にある。戒名は、霊照院殿中室貞心大姉。

(注2) 当院開基貞心尼は北条氏照の娘にして下野佐野城代山中大炊輔妻。 娘(安祥理永大禅定尼、?-1550、注4)も早世して、同じ寺に葬られている。[当寺パンフレットより]
(注3)  『北條氏所領役帳』他国衆(永禄二年)に油井領 (略) 東郡 溝上下、今ハ中山彦四郎 との記載がある。
      中山は山中の間違いではないかとの補注がある。
(注4) 祖父・北条氏照1540年生れからみて、年が合わない。

3. 3度目の中興、青山忠俊公
 その後、徳川家光の傳役であった青山忠俊(1578-1643、注4)により再中興されている。 寺伝では大庫裡を建立したとされる。

(注4) 青山忠俊が徳川家光の勘気に触れ、元和9年(1623)に老中職を罷免の上、岩槻藩4万5千石から上総国大多喜藩2万石に減転封、さらに寛永2年(1625)に改易となった。 上総国網戸~相模国溝郷(注5)~遠江国小林を経て、相模国今泉で蟄居した後、寛永20年(1643)に4月15日死去した。 当寺は溝郷下溝にある。忠俊公は当寺の前に仮居住したといわれる。

 当寺に忠俊公の墓があり、戒名は泰雲院殿前伯州太守春室宗信大居士。 ただし、どの墓にも文字が見えず。
 忠俊公の祖母(青山忠門(1518-1571)室)の位牌もある。戒名は松操院殿天渓貞普大禅定尼(慶長五年九月二日逝去)。
(注5) 1590年当時、約5000石を領した青山忠成(1551-1613)の領地であった。他に、今泉村(海老名市)、小稲葉村(伊勢原市)、城所村(平塚市)などを領した。 1615-23年の間は幕府直轄領になった。 この後、青山忠俊が拝領されたのかはわからない。

 その後、慶安3年(1650)には寺領9石7斗の御朱印地を拝領した。


山門の鬼瓦は、正三角形の三鱗紋(小田原北条氏家紋)、庫裡の鬼瓦には青山氏の家紋・無字銭紋が飾られている。


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