佐藤匠(tek310)の贅沢音楽貧乏生活

新潟在住の合唱指揮者・佐藤匠のブログです。

新潟大学医学部合唱団第80回定期演奏会

2015年12月08日 19時58分20秒 | 合唱
 

 
 5日、新潟大学医学部合唱団第80回定期演奏会、
無事終了いたしました。 
ご来場いただいた皆様ありがとうございました。
 
 80回という節目でしたが
音文が改修中でだいしホールでの開催、
また新大合唱団と時間こそかぶりませんが
同日ということで不確定要素が多かったです。
しかし、多数の方々にご来場いただきました。
感謝申し上げます。
 
 私のステージは、5人の作曲家に
1曲ずつ「生命」をテーマにした作品を委嘱しました。
最初にいらしていただいてた3名の方にインタビュー、
そして1曲ずつ演奏しました。
 
 川崎智徳「見舞い」(詩:谷川俊太郎)
 
 無伴奏混声合唱曲でした。
親友の死をきっかけに書かれた詩で、
見舞いに行く側の緊張や心情が描かれています。
間のとり方と旋律の歌い方が非常に難しい曲でした。
最初、和音にも皆ちょっと苦戦しました。
もう少し詰めたかったですが、本番は丁寧な演奏が
出来たと思います。
 
 福島諭「Eupatorium fortunei」
 
 抽出した二つの和音をそれぞれプログラミングし
一つの音のサイクルを作るという方法などで作曲されました。
詩というより、フジバカマという植物と
アサギマダラという蝶、アルカロイドという物質の
学名がテキストで、植物と蝶の在り様が音世界で表現されています。
 機能和声を用いていない、ものすごくざっくり言うと
いわゆる現代音楽です。最初、みんな面食らったと思います。
僕自身も苦労しましたが、曲の仕組みを理解するうちに、
非常に面白い世界が見えてきたような気がします。
人の営みとしての音楽から一歩引いたところで作られた作品ですが、
人間が歌うことでのエモーショナルな部分とか、
合唱という媒体を考えるきっかけにもなりました。
当日は非常に緊張しましたが、概ねミス無く最後まで歌い切りました。
 
 佐藤さおり「生命の春」(詩:やなせたかし) 
 
 生命に関する詩を僕が探していたときに
見つけた幾つかの詩から作曲者が選んだものです。
春の生命力、その胎動から心が動かされる様子が
描かれています。
ピアノ付きの作品で、ストレートに歌う者聴く人の心に
入ってくる作品だったと思います。
ノリ良く歌うことが出来ました。
 
 松崎泰治「春の臨終」(詩:谷川俊太郎)
 
 春という生命の誕生の季節と
死という生命の終末の対比的な題材で描かれた詩です。
ピアノの分散和音が印象的で、それにのって展開される
美しい作品です。
 しっかりとした構成の中での繊細な音使いが
松崎さんらしいと感じていました。
各パートに出てくるメロディーの歌い方の統一が
最初難しかったですが、次第に揃うようになりました。
声楽的にも無理なく歌える作品でした。
本番の演奏も良かったと思います。
 
 後藤丹「時の花」(詞:栗田芳宏)
 
 ミュージカルになるはずの作品が浮いてしまい、
その旋律を合唱に書き直していただきました。
生きることの大切さを歌った詩です。
心にスッと入ってくるシンプルな作品で、
本来はミュージカルの終盤で歌われることを
想定されていました。
 流れを優先して練習しテンポが速くなってしまっていました。
当日、作曲者よりテンポの指摘を受けて、
指定通りのテンポで演奏して、テキストが伝わりやすく
なったと思います。
 
 様々な視点から「生命」を見つめる
きっかけになりました。団員たちもそうだったのではと
感じています。
アンコールでは
信長貴富「夜明けから日暮れまで」(詩:和合亮一)を
ピアノ付きで演奏しました。
震災をきっかけに書かれていますが、
詩は広く解釈出来るもので、若き団員たちへのメッセージとして
最後に選びました。
「私は誰 日付変更線の先の 明日です 夜明けです」
と最後締めくくられます。
歌っている彼らの様子を見て、
生命みなぎっている彼ら自身が「明日」であり、
振りながら熱い気持ちになりました。
 
 団員たち、ピアノを弾いてくださった斎藤愛子さんに
感謝です。
 
 そして他のステージもみな頑張っていました。
歌ヘの、曲への熱意が伝わるステージだったと思います。
だいしホールということを差し引いても
良い定演になったと感じています。
 
 みんな、おつかれさま!
 
 新潟で恐らく最も歴史ある合唱団ですが、
まだまだ知名度も低いと思います。
人数がなかなか増えず大変なところもありますが、
一人一人が力をつけて皆頑張っています。
今後とも新潟大学医学部合唱団を
どうぞよろしくお願いいたします。