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TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

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山田純嗣展「絵画をめぐって 反復・反転・反映」@不忍画廊

2014年09月02日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩


 古今東西のいわゆる名画をモチーフに、まずは描かれた対象をそっくりそのまま石膏で立体化。そして、それを撮影。一面雪景色のような白い陰影だけの写真に銅版画を重ね、さらに色を塗ったり、レースのような細密な絵を白でびっしりと描き込む。簡単に書くなら、こんな工程による作品を山田さんは生み出しているそうです。
 あえて立体に戻してから再び平面化するという工程の意味するものはなんでしょうか。名画の作者の視点や思考を、手と身体と頭を動かして辿り直すことで、絵画の通常の鑑賞法では感知困難な何かを抽出しようとしているのではないかと想像します。感知困難な何かとは、時代と国境を超えて、見る側を感動させたり素晴らしいと思わせたり共鳴させるという、名画たちが絶対的に内包している要素。それはもちろん、平面に表現された名画からも感じられるはずですが、はっきりと感じられないものも存在している。それを貪欲に探究した成果が、山田さんの作品なのではないかと思うのです。ですから、視覚的には元の名画よりも色が淡く輪郭がぼんやりしていても、逆に、内包されている要素は増感されているのかもしれません。山田さんのオリジナリティが融合されながらも。
 たとえるなら、この作品は、複雑な数字や数式を因数分解してゆくことで初めてポッと表れる因数や素数を追い求めた末に、美しく整えられた解答式。山田さんはもしかしたら理数系頭脳の持ち主ではないかと推測してしまうのです。(山本理絵)