硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 51

2021-05-20 21:06:44 | 小説
「いやぁ、旨いわぁ・・・。で、なんやったっけ。」

「えっ、もう忘れたの。」

「ごめんごめん。おつまみの事考えてたら忘れてもうたわ。あっ、思い出した。何で父さんと結婚したかやったなぁ。」

「もうっ。母ちゃんしっかりしてよ。」

「ほんま、ごめんや。」

手を合わせ、軽く舌を出す。ちょっと小悪魔みたいであざとい。女子から見てもそう思うのだから、男性なら無条件に許してもらえるだろう。

「いいよ。大切なのは話の続きだよ。」

「ほんなら、先ずは、細かい質問受付けよか。なんでもどうぞ。」

「質問形式で答えてゆくの? 」

「その方が、分かりやすない? 」

「まぁ、確かにそうだけど。」

いらちで合理主義。さすがは母。

「じゃあ・・・。結婚の決め手はなに? 」

「うぉーっ、直球やな。これは手ごわい。なら、母ちゃんも受けて立つ。」

「そうこなくっちゃ。」

「そうやなぁ。ぶっちゃけると、父さんがうちの事がむっちゃ好きやったからや。」

「おのろけですか? 」

「そうとも言う。」

「母ちゃんはどうだったの。」

「そこや。そこがちょっと複雑やったんやなぁ。」

「複雑ってどういうことなの。」

「そん時な、他に好きな人が別におったん。」

「ええっ! じゃあ、二股って事! 」

「そうとも言うな。」

「母ちゃん、ひどくない? 」

「いやぁ。まぁ、そこ責められても困るわぁ。過去の事やし。」

少し困った顔をして肩をすくめる母。言い過ぎたかな。

「でも、どうして二股かけたの? 」

腕を組み、首をかしげ、答えに窮している。また言いすぎちゃったかな。でも、これくらいで折れるわけがない。