硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 53

2021-05-22 20:24:19 | 小説
「まぁ、その人の事は、今でも悪いことしたなぁとは思うてる。けど、そうなってしもたら、どこかで誰かが傷つかな先に進めやんくなるんと違う? 器用な人なら二股かけ続けれるんやけど、うちはそんなんできやんだし・・・。仮にやな、きららが、そん時のうちの立場やったらどうする? 」

母の質問は、私の心を深くえぐった。立場は違うとはいえ、私が悩んでいる環境に置き換えると、母が振ってしまった男性が綾乃。母が、川島君。そして私が父になる。母は、あなたが川島君の立場なら、どうするのと、問いかけているのに等しい。
けれど、その設定なら、川島君は私と結婚する事になる。そう考えると、川島君と付き合える可能性が0ではないと言えるけれど、私は父ほど誠実ではないし、父は母の心を動かすことが出来たけれど、こんなに不安定な私では到底無理。でも、母の問には素直に答えられる。

「難しいけれど、好きな人と結ばれる事が幸せだと思うなら、父ちゃんを振ってしまうかも・・・。」

「いやぁ、きららは素直やなぁ。そんなん聞いたら父さん悲しむわぁ。」

「ああっ、内緒にしておいて。私、父ちゃんの事大好きだから。」

「そんなん解ってるって。大丈夫、黙っとく。けど、きららの気持ちもようわかるよ。好きな人と一緒におりたいて思うのは普通やしな。」

「なら、なぜ? 」

「それでも、うちの心を動かしたんは、非言語なんよ。」

「非言語? 」

「そう。言葉ではなく、動作。態度って言ってもええかもしれんな・・・。」