硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 49 

2021-05-18 20:32:26 | 小説
「ありがとう。」

「大事なきららの為や。とうぜんや。」

温かいカレーライス。彩の良いサラダ。私の為に用意された和風ドレッシングとフレンチドレッシング。白いテーブルクロス。青い江戸切子の一輪挿しの花瓶に、黄色いプリムラ。料理を作りながら音楽を流す母の好きなジャズ。
全てが愛おしく思え、私は母の子供なんだなと感じる。

「きらら、目ぇ腫れとるけど、なんかあったん? 母ちゃんに話してみ。すっきりするで。」

遠慮なしに核心をついてくる。でも、どんなことでも、母は私を否定したりしない。だから、反抗しようとも思わなかったし、何事も包隠さず話す事が出来てきたのだけれど、今回はなんだか話しづらい。それなら、私の悩みの種を直接吐露するより、母が父と結婚に至った理由を知る事が、これからの私にとっての大切なヒントになるかもしれない。

「・・・・母ちゃんは、どうして父ちゃんと結婚しようと思ったの? 」

意外な質問だったのか、母はちょっと驚いた様子だったけれど、すぐにニンマリと顔をほころばせ喜んだ。

「なんやぁ、ついにそんなこと聞く歳になったかぁ。いやぁ、なんかうれしいわぁ。けど、そういう話は長なるもんやで、ご飯食べてからにしよか。そうや、恋バナにはお酒や。いっしょにワイン飲も。ちゃちゃと、おつまみも作るわ。」

そう言うと、私の不安をよそに、夢中でカレーライスとサラダを食べだした。私も負けじとパクパク食べる。時頼私を見ては、「どや、上手いやろ。」とか「きらら、ええ食べっぷりやわ。ほんま作り甲斐があるわぁ。」と、嬉しそうにしていた。

「ごちそうさまでした。」
「おそまつさまでした。きれいに食べてくれたなぁ。ありがとう。」

私と母は手を合わせ、カレーとサラダに感謝した。