『哀愁』(40)(1974.11.21.木曜洋画劇場)
(1997.3.『淀川長治の証言 20世紀映画のすべて』)
淀川長治先生の口述速記原稿をリライトするなどという、ありがたくもあるが、恐ろしく骨の折れる仕事が回ってきた。確かに先生が映画を語る術は、神業であり、至芸でもあるのだが、その独特の口調で語られたものを、そのまま原稿にすることはできない。
加えて、さすがの先生も、88歳という高齢だから、当然記憶が曖昧になっているところもあるし、自分の頭の中のイメージで”脚色"している部分も多々ある。そうしたズレを、こちらがどこまで修正すべきかが、悩ましいところなのだ。
というわけで、確認のため、ビデオの力を借りてマービン・ルロイ監督、ビビアン・リー、ロバート・テイラー共演の『哀愁』(40)を再見した。約22年ぶりの再見だったが、驚くほど記憶が曖昧で、先生の記憶違いをどうこう言える立場ではないことを改めて知らされた。
リーは、この映画の1年後に見た『風と共に去りぬ』(39)のスカーレット・オハラ役での、勝気なイメージが鮮明に残っていて、この映画のような、薄幸でかれんな役も似合う美女としての魅力をすっかり忘れていた。今回、見直してみて、小学校時代の初恋の相手だったK・Iは、この映画のリーに似ていなくもなかった、などと増幅された甘酸っぱい記憶がよみがえってきた。
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