田中雄二の「映画の王様」

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『アイネクライネナハトムジーク』

2019-09-05 09:32:47 | 新作映画を見てみた

 伊坂幸太郎の6章からなる連作小説を映画化。監督はインディーズ出身で、今年は『愛がなんだ』も公開され、進境著しい今泉力哉。音楽と主題歌「小さな夜」は斉藤和義。全編が仙台・宮城ロケで撮られている。

 10年前と現在とを交差させながら、出会い、連鎖、絆をキーワードにした複数のラブストーリーが展開する。10年前、仙台駅前の大型ビジョンに、日本人選手が初挑戦したボクシングの世界ヘビー級戦が映る中、偶然出会った佐藤(三浦春馬)と紗季(多部未華子)がストーリーの中心にいることはいるのだが、彼らと不思議な縁でつながるさまざまな人々の姿が描かれるので、群像劇といってもいい。とはいえ、実は“隠れ主役”は矢本悠馬が演じた佐藤の大学時代からの親友なのかもしれないとも思える。

 張りめぐらされた伏線と名ぜりふが読みどころの伊坂の原作を、鈴木謙一が見事に映画用に整理して脚色。今泉監督の確かな演出力と相まって、見ていて気持ちのいい映画に仕上がっている。

 今泉監督については、和歌山県の「田辺映画祭2010」で審査員を務めた際に、デビュー作『たまの映画』が出品され、審査の席でこれを推した覚えがある。あれから約10年がたち、今は随分立派な監督になったと思うと感慨深いものがある。

 


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