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『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』

2024-06-19 09:39:02 | 新作映画を見てみた

『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』(2024.4.27.オンライン試写)

 1940年10月。イタリア海軍の潜水艦コマンダンテ・カッペリーニは、イギリス軍への物資供給を断つため地中海からジブラルタル海峡を抜けて大西洋へ向かっていた。

 その途上で遭遇した船籍不明の船を撃沈するが、それは中立国ベルギー船籍の貨物船カバロ号だった。サルバトーレ・トーダロ艦長(ピエルフランチェスコ・ファビーノ)はカバロ号の乗組員たちを救助して最寄りの港まで運ぶことを決めるが、それは、潜航せずに無防備のままイギリス軍の支配海域を航行するということで、自らと部下たちを危険にさらす行為だった。

 第2次世界大戦中の実話を基に、戦時下でも失われることのなかった海の男たちの誇りと絆を描いた戦争ドラマ。監督はエドアルド・デ・アンジェリス。イタリア海軍全面協力のもと、実物大の潜水艦を再現した。

 オープニングに、2013年にウクライナ人艦長に救われたロシア人遭難者の「海では誰もが神から救いの腕1本の距離にいる」という言葉のスーパーが入る。これは「我々は敵船は容赦なく沈めるが、人間は助けよう」という騎士道精神を描いたこの映画を象徴する言葉であり、現代とのつながりも示すことになる。

 潜水艦を舞台にした映画は数多くあるが、第2次大戦下、潜水艦内で極限状態にいる男たちを描いた点で、ウォルフガング・ペーターゼン監督のドイツ映画『U・ボート』(81)とよく似ていると感じた。ただ、迫力という点では、この映画も決して負けてはいない。

 潜水艦コマンダンテ・カッペリーニ号は、後にドイツに移ってU・ボートとなり、最後は日本で伊号潜水艦となったが、日本の敗戦後、米軍によって海没処理されるという数奇な運命をたどったという。日本でも「潜水艦カッペリーニ号の冒険」(22)としてドラマ化されている。この後日談も映画化したら興味深いものとなるだろう。


『U・ボート』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/dd556621601398305564a1b2f5716591


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