『翔んだカップル』(80)(1982.6.12.)
九州から東京の名門高校へ入学した田代勇介(鶴見辰吾)は、叔父の留守宅に住むことになるが、不動産屋の手違いでクラスメートの山葉圭(薬師丸ひろ子)が間借り人として同居することになる。
今年の正月に、この映画と同じく、相米慎二と薬師丸ひろ子が組んだ『セーラー服と機関銃』(81)を見た際に、随分この映画との比較論を目にした。
その中でも、相米の長回しが話題になっていたが、今回、一緒にビデオを見た先輩が「テレビのトリミングされた画面では、相米の長回しの画は時折そこからはみ出して、収まり切れないんだよ」と解説してくれたおかげで、改めて、映画のテレビ放映の限界を知らされた思いがした。
ところで、肝心のストーリーの方だが、意外に楽しめた。柳沢きみおの原作漫画とは全く違うイメージだが、かと言ってテレビドラマ版ほどコメディタッチでもなく、現代の若者の典型を描き出しているとも言える。
ところが、見ているうちに、「このカップルは、翔んでるどころか、むしろ古いタイプのカップルなのではないか」と思わされた。自分の周りにいる今の若者たちは、恋愛やセックスに関しては、こんなに気を持たせるような、回りくどいことはせず、もっと直接的なのだ。
それ故、薬師丸が演じるヒロインが、翔んでいるようでいて、実は純粋なかわいらしさを持った、伝統的に男が惚れるタイプの女に見えてくる。彼女の人気の秘密は、実はこのあたりにあるのでは? とも思える。
つまり、現実においては、映画の中で彼女が演じたような女性に出会う機会はほとんどない。大げさに言えば、彼女が演じた役は、一風変わってはいるが、男が女に対して抱く理想像なのではないか。そんな気がした。
【今の一言】約40年前、スパイダースの歌じゃないが、「あの時、俺も若かった」ということ。
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