田中雄二の「映画の王様」

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『暗くなるまでこの恋を』『ポワゾン』

2019-05-18 11:05:29 | 映画いろいろ
『暗くなるまでこの恋を』(69)(1989.9.)



 フランスの植民地の島で、たばこ工場を営むマエ(ジャン・ポール・ベルモンド)が写真見合いをする。ところが実際に現れたのは、写真とは全く違う美女(カトリーヌ・ドヌーブ)だった。マエはその女と結婚するが、彼女はマエの預金を引き出して姿を消してしまう。フランソワ・トリュフォー監督。原作はウィリアム・アイリッシュ。

 10数年ぶりの再見。以前見た時は、トリュフォーのヒッチコックへの傾倒ぶりを知らず、この映画のルーツとも言うべき『めまい』(58)を見たこともなかったので、当時『アメリカの夜』(73)『思春期』(76)といった傑作を撮っていたトリュフォーが、それ以前は、随分と詰まらない映画を撮っていたんだなあと単純に思ったものだった。

 ところが『めまい』を見た後で、改めてこの映画を見直すと、不出来という印象が変わったわけではないが、『めまい』同様に、一人の女が前半と後半とでイメージを変える二重構造、ドヌーブのブロンドヘアを映すのに、『めまい』のキム・ノバクを意識したようなカメラアングルを使っているのが分かったりして、何だかひたすらヒッチコックに憧れるトリュフォーがかわいらしく思えるようなところがあった。

『ポワゾン』(01)(2005.12.16.)



 テレ東「木曜洋画劇場」で『ポワゾン』を。いわゆる毒婦ってやつですわ。舞台は19世紀のサンチャゴ。裕福な事業家のもとに、写真とは別人の花嫁が来るって、これはひょっとしてトリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』(69)のリメークか? と思ったら、クレジットで原作コーネル・ウールリッチ=ウィリアム・アイリッシュ(『暗闇へのワルツ』)と出た。やっぱりそうか。まったくノーマークの映画だったのでちょっとびっくり。

 それにしてもアントニオ・バンデラスとアンジェリーナ・ジョリーの組み合わせとはなんとも濃い。おかげで妙な話に変わってしまっていた。『暗くなるまでこの恋を』も決して傑作ではなかったけれど、ここまでやられるとジャン・ポール・ベルモンドとカトリーヌ・ドヌーブのコンビがとても良かったように思えてしまう。

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