『赤毛』(69)(1980.8.11.)
例によって三船プロ製作の締まらない映画かと思いきや、非常に面白くて驚いた。御大・三船敏郎の豪快さ、多彩な脇役陣、岡本喜八監督によるユーモアを含んだストーリー展開などが相まって、飽きることなく見入ってしまった。
幕末の赤報隊の悲劇に、百姓のええじゃないか一揆を絡ませ、百姓上がりの無知だがお人好しの赤毛の権三(三船)を中心に、女郎たち、若い百姓たち、代官(さすがの伊藤雄之助!)、そして官軍など、さまざまな人間たちを、時にユーモラスに、時に悲しく描いている。
岡本喜八流の明治維新への皮肉が効いている。その点で、高橋悦史扮する浪人がしばしばつぶやく「葵が錦に変わっただけじゃねえか」というセリフが印象的であり、この映画のテーマを象徴していると思った。共同脚本は広沢栄。
【今の一言】寺田農は、権三に従う兵士の三次を演じた。