『激流』(94)(1995.3.20.UIP試写室)
元リバー・ガイドのゲイル(メリル・ストリープ)は、息子(ジョセフ・マゼロ)の誕生祝に、夫(デビッド・ストラザーン)と息子と共に故郷で川下りをしていた。そんな中、逃亡中の強盗犯(ケビン・ベーコン、ジョン・C・ライリー)が現れ、息子を人質に取って、ゲイルにガイドを強要する。
この映画、最近流行の家族の絆回復劇に、隠し味でスリルの辛味を効かせてみた、といった感じだが、父権の失墜、強い女性、という今日的な側面を除けば、過去の西部劇やロードムービーからの戴き的なところも目に付き、サスペンスとしては、ウィリアム・ワイラーの『必死の逃亡者』(55)のアウトドア版の趣きで、主役が父親から母親に代わった、といったところだ。
ただ、こんなふうに何日もかけた川下りが可能なロケーションを持つ広大な国アメリカならではの映画と言うこともできるだろう。
そして、初めて本格的なアクションに挑んだというストリープはさて置き、屈折した犯人像を、先に公開された『告発』(95)とは違った形のうまさで演じたベーコンが何とも光った。そろそろ彼に名優という称号を与えてもいいかもしれないが、この映画の場合は、そのために、彼が悪人に見えずに困ってしまう、という反作用を生んでいた。
ところで、事件を解決するのは、またしても銃であった。そうなると、この家族の絆の回復をうたったはずの映画の弱点や、引いては、銃社会、自衛の国としてのアメリカの弱点が浮き彫りになってくるところがある。
どうせなら、ストラザーン扮するダメな夫の知恵で片が付くようなエンディングにした方が、家族の絆の回復というテーマが明確になり、すっきりと見終われた気がするのだが、それでは甘いのだろうか。
そういえば、この映画は、95年のゴールデンウイーク映画の一本だった。
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