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『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ

2019-07-16 08:17:58 | 映画いろいろ

『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)(2005.11.24.品川プリンスシネマ)

 西岸良平の原作漫画は短編集のようなものだから、1本の映画としてどのようにストーリーを組み立てているのかに興味があったのだが、鈴木オートのお父ちゃん(堤真一)の性格を変え、六ちゃんを女の子(堀北真希)にするなどの脚色はあったものの、概ね原作の世界を大事にしていたので好感が持てた。とはいえ、この映画の魅力は昭和33年を再現した見事なCG(東京タワー、都電、商店街…)と小道具へのこだわり(万年筆!)と子役のうまさに負うところが大きい。特に淳之介役の須賀健太には見事にやられた。泣かされた。自分が生まれた頃の東京の風景が懐かしかった。
 
 話は変わるが、懐かしいから昔に戻りたいとは思わない。もはや自分は違う時代を生きてしまっているのだ。密度の濃い家族関係や隣人関係も全てがいいとは思わない。それはそれで煩わしかったりもするのだ。皆貧しさから脱出したいから、便利なものが欲しいから必死に働いたのだ。けれども人は失った絆や無くしたものや、捨てたものに思いをはせる。物に囲まれることだけが幸せなのかと問うたりもする。そんな矛盾を抱えながら、答えを出せないままに結局人生は流れていくのだろう。その点で、この映画のラストに映される不変の“自然の美”である夕焼けと、作られた“人工の美”である東京タワーの組み合わせは象徴的だった。どちらも美しい。
 
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(07)(2008.6.19.)
 
 オープニングでいきなりゴジラが現れる。特撮出身の監督、山崎貴が本当に撮りたかったのはこれだったのかもしれない。三丁目の人々の“その後”が描かれるのだが、前作ほどのインパクトがなく、間延びした印象を受けるのは、続編の宿命か。背景となる昭和30年代前半は、自分が生まれる少し前なので、懐かしくはあるのだが、本当にあの時代に帰りたいとは思わないし、また帰れるはずもない。まだ貧しく戦争を引きずったあのころが全て良かったと思うのは所詮幻想である。
 
 では、自分も含めて何故人は捨てたり失ったりしたものにノスタルジーを憶えるのだろうか。これは永遠の謎であり、人間が抱える二律背反するジレンマでもあろう。その点で、この映画で小日向文世が演じた実業家が吐く、「今は(貧乏でも)幸せだが、必ず後悔する」、「金が全てじゃない、けれども…」、というセリフは象徴的だ。まだ首都高が上にない日本橋、新幹線以前の「こだま」などまたまたCGが威力を発揮しているが、最も印象的だったのはエンドロールの8ミリ風の映像だった。
 
『ALWAYS 三丁目の夕日'64』(12)(2012.1.22.MOVIX亀有)
 
 前作『ALWAYS 続・三丁目の夕日』から約5年後の1964(昭和39)年、東京オリンピック開催の年を舞台としている。 いよいよ自分も知っている世界が舞台となった。今回は、淳之介(須賀健太)の独立、六子(堀北真希)の結婚に関する話がメインで描かれる。このシリーズを見終わって、改めて良くも悪くもオリンピックと新幹線が東京の風景を変えたのだと思った。
 
【今の一言】監督の山崎貴はこの後、『永遠の0』(13)や近々公開の『アルキメデスの大戦』といった戦争物も手掛けているが、それらも、思想云々というよりも、失われたものへのノスタルジーや、CGを駆使してそれを再現することへの興味の方が強いのだと思う。
 

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時代を知らないことは恐ろしい (さすらい日乗)
2020-03-18 11:00:30
この映画のように、1950や60年代の日本があたかも良い時代だったような言説があるが、物を知らない者というべきだろう。

この時期は、東京でも便所はほとんど汲み取り式で、その匂いは凄かった。映画は匂いが出ないのでわからないが、極めて不衛生な社会だった。東京でも水洗便所が普及するのは、1970年代以降である。
向田邦子のエッセイに渋谷の飲屋でハンドバックをトイレに落としたが、便の中から取り出したという話がある。そんな時代だったのである。
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