『オーバー・ザ・トップ』(87)(1987.7.25.大井ロマン.併映は『クロコダイル・ダンディ』)
強引なアメリカンドリーム
妻子を捨て、トラックの運転手になったリンカーン(シルベスター・スタローン)。妻が病気との知らせを聞き、彼は10年ぶりに妻と息子と再会を果たす。リンカーンはアームレスリングを通して親子の絆の再生を試みるが…。監督はキャノンフィルムズのメナハム・ゴーラン。
アメリカ映画には昔から父子物とも呼ぶべきジャンルがある。古くは『チャンプ』(31)『赤い河』(48)『エデンの東』(55)、最近ではリメーク版の『チャンプ』(79)『クレイマー、クレイマー』(79)『ナチュラル』(84)…。
この映画は、そうした父子物にスタローンお得意のアメリカンドリームを足して作られたもので、それなりに面白く見られはするのだが、スタローンのアメリカンドリームは『ロッキー』(76)以降、どんどんと変わっていき、あざとさが目に付くのは否めない。
どうやらそれは、スタローン自身の変貌とも大きく関係しているようで、下積み時代に書いた脚本を売り込んで自ら演じた『ロッキー』と、その後のロッキー・シリーズやランボー・シリーズとでは、アメリカンドリームを描きながら大きな開きがある。
前者は、たとえ恵まれない環境にあっても、自分自信を精いっぱい燃焼させることで道は開ける、という昔ながらのものだが、後者は夢をつかむ者は強くなければならないというような強引さが目に付き、あまりいい感じがしないし、素直に入り込めない。
スタローンは、スターになったことで大事な何かを忘れてしまったのだろうか。それとも、病める今のアメリカがそうしたヒーロー像を望んでいるからなのか。
『キャノンフィルムズ爆走風雲録』
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