『ゴジラ-1.0』 (2023.10.18.TOHOシネマズ新宿)
舞台は終戦直後の日本。戦争によって焦土と化し、何もかもを失い、文字通り「無(ゼロ)」になった東京に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現する。ゴジラはその圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラと戦う術を探っていく。
ゴジラの生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。監督・脚本はVFXも手掛ける山崎貴。タイトルの「-0.1」の読みは「マイナスワン」。
NHK連続テレビ小説「らんまん」で夫婦役を演じた神木隆之介と浜辺美波が共演。特攻隊の生き残りである主人公の敷島浩一を神木、焼け野原の東京で敷島と出会う大石典子を浜辺が演じる。そのほか山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介らが出演。
庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』(16)は、今の日本にゴジラが現れたら…というポリティカル・フィクションだったが、この映画は、“戦争とゴジラ”という原点に回帰し、まだ自衛隊が存在しない日本にゴジラが現れたら…という、今までのゴジラ映画にはなかった設定で描いている。
山崎監督は、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(07)のオープニングでゴジラを出したこともあるが、この映画を見ると、理論派でドライな印象を受ける庵野監督とは違い、ウエットな部分でゴジラに対する強い思い入れがあるのだろうと感じた。
見どころの一つは“海のゴジラ”。小型船でゴジラと対峙するところは『ジョーズ』(75)、敷島が飛行機で行う空中戦は『ゴジラの逆襲』(55)の影響が見られるが、空中戦は自作の『永遠の0』(13)、巨大艦船は同じく『アルキメデスの大戦』(19)での経験が生きている。ともあれ、先の『沈黙の艦隊』同様、CG(特撮)の効果が絶大だ。
音楽の佐藤直紀も頑張ってはいるが、いかんせんあの伊福部昭の音楽が流れると、全てをそっちに持って行かれるところがあった。