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加山雄三の映画『俺の空だぜ!若大将』

2023-01-06 16:44:08 | 映画いろいろ

『俺の空だぜ!若大将』(2011.5.21.日本映画専門チャンネル)

 若大将シリーズは結構見ているのだが、これは未見だった。今回のスポーツは、タイトル通りのスカイダイビング。

 ただ、主人公の若大将こと田沼雄一がサラリーマンになったのもさることながら、演じる加山雄三をはじめとするレギュラー陣がやけに老けて疲れて見えるし、演出も雑な感じがする。

 60年代後半と70年代前半に作られた映画とでは、たかが数年しか違わないのに、全く雰囲気が異なる。これは斜陽に向かった当時の映画界の空気が如実に反映されていたということなのか。やはり、明るく能天気な若大将シリーズは60年代の映画なのだ。

 ところで、2代目の若大将は草刈正雄だとばかり思っていたら、ここに大矢茂という2代目がいた。当時は期待の新人だったのだろうか。その影の薄さは、007シリーズの2代目ジェームズ・ボンド役のジョージ・レイゼンビーをほうふつとさせる。おばあちゃん役の飯田蝶子はこれが最後の出演となったという。

 加山は波瀾万丈の人生を歩みながらいまだに現役を続けている。で、NHK BSの『武田鉄矢のショータイム』のこの日のゲストだった小林旭もまた、すさまじい人生を送ってきた人だ。映画スター小林旭の輝きはリアルタイムでは知らないが、この番組でスターとしての矜持や存在感の大きさをあらためて知らされた。

 そして、とても72歳とは思えぬ、あの独特の張りのある高音の歌声、いわゆる“アキラ節”で、「ギターを持った渡り鳥」から「自動車ショー歌」「さすらい」「北帰行」「昔の名前で出ています」「熱き心に」まで、雑多な種類の名曲を披露する姿には圧倒された。特に「北帰行」は、一緒に出ていた浅丘ルリ子じゃなくても、聴いていると泣けてくるぜ。

 この後、日本映画専門チャンネルに戻ったら、武田鉄矢主演の『刑事物語3 潮騒の詩』(84)をやっていた。ジャッキー・チェンを意識したカンフーアクションなどに努力の跡はうかがえるが、これが先の加山や旭なら、何をやっても努力の跡を感じさせないだろう。

 鉄矢には気の毒だが、そこが彼らの大スターたるゆえんなのだ。この映画、製作はキネマ旬報社だが、沢口靖子のデビュー作、共演は若大将シリーズの澄ちゃんこと星由里子と夏木陽介と来れば、これは実質的には東宝映画じゃないか。


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