『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2023.1.15.オンライン試写)
経営するコインランドリーが税金に追われ、四苦八苦のエヴリン(ミシェル・ヨー)。おまけに、ボケているのに頑固な父親(ジェームズ・ホン)、反抗期が終わらない娘(ステファニー・スー)、優しいだけで頼りにならない夫(キー・ホイ・クァン)に囲まれ、悩める日々を送っていた。
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そんな彼女の前に、突然「別の宇宙(ユニバース)から来た」という、夫とうり二つのウェイモンドが現れる。混乱するエヴリンに、ウェイモンドは「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と驚きの使命を告げる。
カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を融合させ、生活に追われるごく普通の中年女性が、マルチバースを行き来し、カンフーマスターとなって世界を救うことになる姿を描いた異色のアクションアドベンチャー。
製作は、ジョー・ルッソとアンソニー・ルッソのルッソ兄弟。監督・脚本はダニエル・クワンとダニエル・シャイナートの通称・ダニエルズ。共演にジェイミー・リー・カーティス。
最初は、猛スピードで目まぐるしく展開する、突拍子もない話に面食らい、「一体何じゃこれは?」状態になるのだが、何でもありのマルチバースという設定に慣れてくると、思いの外楽しめた。というか、一見、奇想天外に見えるこの世界の、根底にあるのは、人生の選択、母と娘、家族の再生、幸せの追求といった普遍的なテーマだったのだ。
そして、そこに、移民やらジェンダーの問題に加えて、『2001年宇宙の旅』(68)などの旧作のパロディも入れ込んでいる。まさにタイトル通り、「あらゆるものが、あらゆる場所で、一斉に」起きるごった煮感がある。こうした多元宇宙が表現できるのは映画の特性であり、これは、ばかばかしくも、それを最大限に生かしたものの一つだといえるだろう。
一人で何役もこなしたヨーとクァンとスーは、大変だったろうが、その半面、楽しくもあったのではないかと思った。特に、子役時代に『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(84)でショートラウンド、『グーニーズ』(85)でデータを演じたクァンの復活は特筆に値する。先に発表されたゴールデングローブ賞では、主演女優賞(ヨー)と助演男優賞(クァン)を受賞した。
この経験が今回の映画の製作に通じるのだろう。
【インタビュー】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』アンソニー・ルッソ監督
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