田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『脇役本 増補文庫版』(濱田研吾)

2018-07-01 07:12:59 | ブックレビュー



 大泉滉、山形勲、天本英世、芦田伸介、伊藤雄之助、滝沢修と、南伸坊のイラストを配した表紙もうれしい。映画や舞台で活躍した名脇役たちの著書を通して、彼らの意外な一面や、知られざる人生を紹介した逸品。まさに「おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな」の趣があり、同じく脇役好きの自分にとっては、たまらないものがあった。

 例えば、野口元夫が吉野鮨の親方だったことは知っていたが、吉田義夫が日本画家だったことは知らなかった。また、古本マニアが高じて“新劇屑屋”と呼ばれた松本克平、絵番附を鬼のように蒐集した柳永二郎、ミニ盆栽の大家となった中村是好などには、偏執狂的な執念が感じられておかしいやら、あきれるやら…。

 紹介本の中で、読んだことがあるのは加東大介の『南の島に雪が降る』だけだったが、『私の古本大学』(松本克平)や、宮口精二が編んだミニコミ誌『俳優館』を読んでみたくなった。

 筆者は1974年生まれというから驚くばかり。映画やドラマはまだしも、舞台や歌舞伎の知識に関してはとてもかなわない。故人を偲ぶために、遺族や友人が編んだ非売品(配り物)の本を「まんじゅう本」と呼ぶことも、この本で初めて知った。

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